相次ぐヒグマ死亡事故:北海道「警報」発令、人里での脅威深まる

日本全国で住宅地にクマが出没し、人身被害が相次いでいる。特に北海道では、前例のない「ヒグマ警報」が発令される事態に発展した。この厳重な警戒体制が敷かれたきっかけは、深夜の新聞配達員がヒグマに襲われ死亡した悲惨な事故だ。第一発見者が目の当たりにした現場は、まさに「地獄絵図」と呼ぶべきものだった。

北海道福島町での悲劇:第一通報者が語る現場の「地獄絵図」

今月12日未明、北海道福島町三岳地区で、新聞配達員の佐藤研樹さん(52)がヒグマに襲われ、変わり果てた姿で発見された。遺体は草むらに隠されるように横たわり、腹部を中心に噛み痕が多数見られた。

事件の第一通報者である笹井司さん(69)は、当時の恐怖をこう語る。「人間の呻き声、“うわぁ〜”というような悲鳴が聞こえて、なんだべと思って玄関の扉を開けたら目の前にヒグマがいた。距離はわずか2〜3メートル。その恐怖は忘れられません。」笹井さんが最初に見たのは黒い塊だったが、よく見るとその下に人間の腕らしきものがあり、仰天したという。「クマが人に覆いかぶさっていたんです。大声を出してもクマは振り返りもしない。それで警察に通報しました。」笹井さんの携帯電話の履歴には、午前2時53分に110番への発信記録が残されていた。

通報中もヒグマは佐藤さんの体を口にくわえ、あっという間に草むらへと引きずり込んでいったという。「ものすごいスピードでしたよ」と笹井さんは振り返る。その後の現場検証で、ヒグマが遺体を発見された草むらまで約100メートルもの距離を引きずっていたことが判明した。襲ったヒグマは体長1.5メートルほどとみられている。

隣人の証言と残された血痕:地域に広がる恐怖と「ヒグマ警報」の継続

笹井さんの隣人である柏崎進一さん(53)も、大きな物音で目が覚めたという。「叫び声が聞こえて、何事かと家の2階の窓から外を見たら、クマと目が合いました。恐怖で体がすぐに動かなかったですね。」金属バットを持って玄関を出たものの、クマと戦うことは躊躇されたと語る。襲われた佐藤さんは、クマの攻撃を必死に払い除けようと体を動かし、抵抗しているように見えたという。柏崎さんは「クマが通った塀や道の上には、血が飛び散った跡がついていました」と、現場の生々しい状況を証言した。

北海道福島町の住宅地、新聞配達員がヒグマに襲われた現場の玄関前に広がる血痕北海道福島町の住宅地、新聞配達員がヒグマに襲われた現場の玄関前に広がる血痕

笹井さんもまた、当時の惨状を鮮明に記憶している。「玄関前に敷いた砂利は赤く染まり、血痕が30センチ四方に広がっていました。通路脇の塀にも点々と血が付いていましたね。」笹井さんの話では、自身がコンブ漁の手伝いの準備をしている時に、玄関先で自転車のスタンドを立てる音が聞こえたという。「ああ、新聞を配りに来てくれたんだと思ったら、人の叫び声が聞こえて……。ポストにはちゃんと新聞が入っていたので、佐藤さんは私の家に配ってくれた後、襲われてしまったようです。」

この事故から3日経った15日時点でも、佐藤さんを襲ったヒグマの行方は不明のままだ。現場近くのスーパーでは、ロッカーが破壊され生ゴミが散乱しているのが発見されており、クマが漁ったものとみられている。北海道は、人里でのクマによる人身被害の拡大を受け、来月11日まで「ヒグマ警報」を解除しない方針だ。

北海道だけに留まらない脅威:岩手県での悲劇と全国的な警戒の必要性

住宅地でクマが人を襲う事件は、北海道に留まらない。福島町での凄惨な死亡事故の約1週間前、今月4日には岩手県でも80代の女性が自宅でクマに襲われ死亡する痛ましい事故が発生している。これは、クマによる人身被害が全国的な問題として深刻化していることを示唆している。

こうした緊急事態に対し、地域住民の安全確保と、クマとの適切な共存策が喫緊の課題となっている。詳細な事故の経緯やその背景にある原因については、7月17日発売の「週刊新潮」にて詳しく報じられる予定だ。

参考文献

  • 「週刊新潮」2025年7月24日号
  • 新潮社
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