7月20日の投開票を目前に控える参院選は、与党・自民党にとって極めて厳しい局面を迎えている。「このままではマズイ……」という焦燥感が、自民党本部を覆っているという。7月11日に永田町で行われた選対関係者による“緊急会合”では、現状の厳しさが突きつけられ、関係者らは「真っ青になった」と伝えられる。与党の目標は、非改選議席と合わせて参院の過半数を維持するための「自公で50議席」の確保だが、その達成が危ぶまれている。
石破首相の“不人気”が党勢を直撃:進行する「石破隠し」
前回の2022年参院選は、安倍晋三元首相が凶弾に倒れた直後という異例の状況下で行われ、追悼の空気感が自公両党の圧勝を後押しした。しかし、今回はその恩恵もなく、自民党の支持率は日を追うごとに低下の一途を辿っている。特に深刻なのが、石破茂首相(68)の不人気だ。
安倍元首相が街頭に立てば大勢の聴衆が集まったのとは対照的に、石破首相の演説が始まると同時に帰途につく人が続出しているという。この“不人気”ぶりは深刻で、一部の自民党候補者は、選挙応援に石破首相を招くことを避け、「石破隠し」を画策していると報じられている。首相への選挙応援オファーもほとんど届いていない現状は、党全体への逆風を象徴している。
参院選に向けた政治情勢を象徴する一枚:不人気により「石破隠し」が進む石破首相(中央)と、躍進が期待される国民民主党の玉木代表(右)、参政党の神谷代表(左)。
激戦区の最新情勢:与党候補の苦戦と“逆風”の現実
石破首相の不人気に加え、注目される各選挙区での自民党候補者の苦戦も顕著だ。
東京選挙区:ベテランと元長官が苦戦する混戦模様
定数6に補選分1が加わった激戦の東京選挙区では、当選5回のベテラン武見敬三氏と、初代スポーツ庁長官を務めた鈴木大地氏が自民党から立候補している。当初は両名当選も視野に入れていたが、自民党の最新調査では武見氏が厳しい状況にあり、鈴木氏も「ぶっちぎり」というわけではなく、立憲民主党の塩村あやか氏、参政党のさや氏と3位争いを繰り広げる混戦となっている。
京都・和歌山:失言と自民党への逆風が直撃
いわゆる“ひめゆり発言”で大きな批判を浴びた京都選挙区(定数2)の西田昌司氏も、当初のリードを失い、共産党、立憲民主党、日本維新の会と四つ巴の様相を呈している。失言に加え、自民党全体への逆風が支持を伸ばし悩ませている原因と見られている。
さらに、自民党の元重鎮・二階俊博氏のお膝元である和歌山選挙区(定数1)では、息子の二階伸康氏が大苦戦し、無所属の望月良男氏を追いかける展開だ。これに追い打ちをかけたのが、自民党の鶴保庸介氏が7月8日に和歌山県内の演説で放った「運のいいことに能登で地震があった」という大失言である。鶴保氏は謝罪し予算委員長を辞任する意向を示したが、この発言が選挙戦に与える悪影響は避けられない。自民党関係者からは「本当に余計なことをしてくれた」「党内でも目の敵にされている」という声が上がっており、最新調査では鶴保氏失言の影響がまだ反映されておらず、今後さらに支持率が下がる可能性が危惧されている。
参院選終盤の予測:自公「50議席」割れの可能性と政界再編の足音
全国紙を含む複数の投票調査を総合すると、自民党は改選前の52議席から10議席以上減少し、公明党も改選前14議席から2~3議席減となる見込みだ。比例代表の結果次第では、与党が掲げた「自公で50議席」という勝敗ラインを下回る可能性も現実味を帯びている。もし、この目標を達成できなければ、日本の政界には再編の波が押し寄せることは避けられないだろう。
キャスティングボートを握る勢力:国民民主党と参政党の存在感
このような状況下で、政界のキャスティングボートを握り得る存在として注目されるのが、国民民主党と参政党だ。
参政党の神谷宗幣代表は7月13日、千葉県柏市での街頭演説で「今回の参院選で躍進しても、いきなり50、60議席になるわけではない。次の解散総選挙で一気に与党入りを目指す」と語った。この発言は、将来的な自民党への“秋波”と見る向きもあり、自民党内には参政党への拒否反応を示す議員もいるものの、政権維持のためには連携を模索する動きが出てくる可能性が指摘されている。
一方、国民民主党の玉木雄一郎代表も捲土重来を期している。かつての山尾志桜里氏の擁立を巡る騒動で株を下げた時期もあったが、「手取りを増やす」という分かりやすいキャッチコピーを掲げ、参院選では改選前の4議席から二桁議席に増やすことが確実視されている。玉木氏は選挙直前の合同インタビューで「総理になりたい」と言い切っており、参院選後、再び政界のキャスティングボートを握る立場になることを明確に意識しているようだ。
岸田元首相の「再登板」シナリオ:水面下の動き
現政権の苦境の裏で、意気軒昂なのが岸田文雄元首相だという。自民党関係者によれば、岸田元首相はこのところ自民党の幹部たちと頻繁に会合を重ねている。参院選で自公が過半数割れとなれば、当然ながら石破首相の責任論が追及され、辞任する可能性は高い。そうなった場合、岸田元首相は再び首相の座に「再登板」することに意欲満々であると伝えられている。
運命の投票日まで残された時間はわずかだ。今回の参院選の結果は、日本の政治の未来、そして国民の生活に大きな影響を与えることになるだろう。この国の未来は、有権者一人ひとりの投じる一票にかかっているのかもしれない。
参考文献
- FRIDAYデジタル
- Yahoo!ニュース (記事掲載元)