三原じゅん子こども家庭庁大臣の「公金中抜き」発言が波紋、その背景と多義性

2024年7月16日、こども家庭庁の三原じゅん子大臣(60歳)が自身の公式Xアカウントを更新し、同庁への批判に対し反論する投稿を行いました。しかし、この投稿内容が広範な波紋を呼び、特に「公金中抜き」という表現を巡って議論が巻き起こっています。

三原大臣は、自身の投稿の中で「各省庁の予算総額に占める委託費の割合」を示すデータを提示しました。このデータによると、15の省庁における外部委託費の比率で最も高いのは内閣官房の「31.28%」である一方、こども家庭庁は「0.06%」と最も低い水準を示しています。この数値に基づき、三原大臣は「こども家庭庁予算ファクト2『公金中抜き』とのご批判が多いのですが実際には1番少ない庁」と投稿し、同庁への疑念を払拭しようと試みました。

「中抜き」という言葉の多義性と誤解

三原大臣の投稿に対し、X上では「公金中抜き」という言葉に関する指摘が相次ぎました。ユーザーからは「公金中抜きを否定しないのね」「結局中抜きしてるって認めてますやん」「他の庁も含めて『中抜きしています』って言ったと同じですね」といった批判が寄せられ、大臣が「中抜き」の存在を事実上認めたかのような解釈が広がったのです。

そもそも「中抜き」という言葉は、ビジネスの文脈において生産者と消費者が仲介業者を介さずに直接取引することを指す言葉として使われていました。しかし、現代においては、不必要に仲介者が介入し、その過程で手数料やマージンが不当に高額になることを批判的に指す意味合いが一般的になっています。この後者の意味合いが、今回の公金支出に関する議論の焦点となっています。三原大臣の発言が、意図せずして「不適切な中間搾取」を是認しているかのように受け取られた背景には、この言葉の多義性とその一般的な解釈のずれがあると考えられます。

こども家庭庁公式noteと三原大臣の発言意図

全国紙政治部記者の解説によると、三原大臣が提示した委託費のデータは、こども家庭庁が運営する公式noteに今年5月に投稿された内容に基づいていると見られます。こども家庭庁のnoteでは、「時折、こども家庭庁の予算について『外部委託ばかりで中抜きが多い』といったご批判を目にします。日々予算を担当する実感とは少し違ったので気になり、少し調べてみました」という文章に続き、「委託費を計上する全省庁の中で、こども家庭庁の委託費の率は最小です」と、三原大臣が引用したデータと全く同じ情報が提示されています。

さらに、noteでは「こども家庭庁の予算は、基本的に全額、地方自治体に交付された上で、事業者やご家庭への給付等で活用されています。このため、そもそも外部委託は極めて僅少です」と、費用の透明性について詳細な説明がなされています。今回の三原大臣の投稿は、「こども家庭庁は外部委託による中抜きで公金を無駄にしている」という批判に対して、これらの公式な根拠に基づいて反論を試みたものと推測されます。しかし、そこで「(中抜きは)1番少ない庁」という表現を用いてしまったため、こども家庭庁のみならず、他の省庁においても公金の中抜きが行われていることを是認しているかのような印象を与え、結果として多くのユーザーからの批判を招く結果となりました。

大臣の相次ぐ言動と批判の背景

三原大臣の言動が物議を醸したのは、今回が初めてではありません。先の『週刊新潮』(7月3日号)では、国会を抜け出して美容整形クリニックに赴いたと報じられ、既にそのモラルが問われていました。

三原じゅん子こども家庭庁大臣が公金中抜き発言や美容整形報道で物議を醸す様子三原じゅん子こども家庭庁大臣が公金中抜き発言や美容整形報道で物議を醸す様子

三原大臣がこども家庭庁大臣に就任したのは2024年の第一次石破内閣発足時ですが、日本の少子化問題に対し国民が納得できるような具体的な政策はまだ打ち出されておらず、こども家庭庁自体の存在意義に疑問の声が上がることも少なくありません。2024年5月に放送された『DayDay.』(日本テレビ系)では、こども家庭庁の予算が7.3兆円に上ることに言及し、「児童手当、育児休業、保育園運営費、ひとり親支援など、すぐに7.3兆円になる。内訳を正しく皆さんにお伝えを一生懸命しているが、なかなか知っていただけない」と語っていました。また、少子化対策についても「対策がうまくいっているかと言われれば、そうではない。本当に申し訳ないと思っております」と反省の弁を述べています。

このような逆境に立たされている三原大臣にとって、公職の立場にある人物としてモラルを問われる言動や失言が続くことは、彼女自身の立場、ひいては国民からの信頼という点で、決して好ましい状況とは言えないでしょう。

結び

三原じゅん子こども家庭庁大臣のX投稿は、一見すると同庁への批判に対する論理的な反論に見えました。しかし、「中抜き」という言葉の解釈のずれと不適切な表現が、かえって公金支出の透明性に対する疑念を深め、国民の不信感を招く結果となりました。公金を扱う政府機関の長として、国民への情報発信においては、言葉の選択とその意図、そしてそれがどのように受け取られるかを慎重に考慮する姿勢が、これまで以上に求められています。この一連の出来事は、政治家が発するメッセージの重要性と、言葉の持つ影響力を改めて浮き彫りにしました。

参考文献