参院選で旋風を巻き起こす参政党:批判を力に変える「異例の勢い」の正体

2022年参議院選挙において、従来の主要メディアの予想を覆し、まさに旋風を巻き起こしている新興政党、参政党。序盤情勢調査でその躍進が報じられて以降、一部の極端な主張に対する批判が高まり、失速が予測される局面もありました。しかし、投開票日が近づくにつれて、その勢いはむしろ加速。メディアからの批判が、かえって支持拡大の原動力となるという驚異的な現象は、一体何がその背景にあるのでしょうか。本記事では、この異例の「参政党パワー」の深層に迫ります。

批判を歓迎する支持層の心理と背景

参政党の神谷宗幣代表の発言や公約、例えば「高齢の女性は子供が産めない」や「終末期医療の全額自己負担化」といった内容は、大手メディアから厳しい批判に晒されています。しかし、神谷氏自身やその支持者たちは、これらの批判を全く意に介さない様子です。

神谷宗幣代表の肖像。参院選で躍進した参政党の勢いを象徴する人物。神谷宗幣代表の肖像。参院選で躍進した参政党の勢いを象徴する人物。

東京選挙区で参政党候補の個人演説会に参加していた68歳の男性医師は、メディアの批判について「どんどんあっていい。むしろ批判されればされるほど、それに対して反論する材料が出てきて、それがまたメディアに取り上げられる。だから、批判があることは歓迎だ」と述べ、独特の支持構造を示唆しました。彼は以前、自民党の杉田水脈氏を支持していましたが、「日本人ファースト、反グローバリズムという方針が自分の考えに合う」と参政党へと支持を移したと語ります。

多様な関心を集める「国民の不満の受け皿」

参政党の支持層は、国民民主党が「手取りを増やす」という一点集中型の政策で支持を伸ばしたのとは対照的に、多様な関心を持つ人々で構成されているのが特徴です。例えば、別の日の街頭演説会に参加していた42歳の男性会社員は、自身の子供がアトピー性皮膚炎であることから「グルテンフリーや食の大切さを痛感した」ことがきっかけで党員になったといいます。彼は「外国人問題だけでなく、オーガニックの食、国防、消費税などテーマが幅広いのが参政党の良いところ。党員向けの勉強会も充実している」と、多角的なアプローチを評価しています。

また、日本維新の会を離党し参政党の比例代表候補となった梅村みずほ氏の街頭演説を手伝っていた40代の会社員男性は、これまで特定の支持政党はなかったものの、「共同親権の法制化を進める市民団体の活動を通じて梅村氏を支持してきた」と述べました。彼もまた、「日本人ファーストや消費税の廃止などの主張にも納得しているが、共同親権の推進を公約に掲げてほしい」と、具体的な政策への期待を口にしています。

スピリチュアリズムとの関連性:不安の受け皿としての参政党

宗教学者であり、政党と支持層の研究を長年重ねてきた島田裕巳氏は、参政党の現象について興味深い指摘をしています。「現在のグローバリズムの中で、自分たちが虐げられているという漠然とした感覚を持つ人がかなりいる。世の中に不満や不安があるが、政治は滅茶苦茶で信用できない。かつて新宗教がそうした人々の受け皿になっていたが、今や新宗教は衰退し、スピリチュアリズムが勃興している。そうした流れの中で、『世の中は間違っている』と強く訴え、人々の不安や不満の受け皿となっているのが参政党なのではないか」と分析します。

メディアから叩かれるほど支持が高まる理由も、この背景にあると島田氏は見ています。「スピリチュアルや陰謀論に傾倒する人々は、一方的な情報を取り入れて理論武装している傾向がある。彼らは『とにかく世の中は間違っている』と考えているため、外部からの情報や批判を信じない。むしろ批判を糧とし、自らが持つ情報の正当性をより強く確信するようになるため、運動体としてさらに拡大しやすい」と説明します。

今後の課題と展望

しかし、島田氏は同時に、参政党の今後の課題も指摘します。「神谷氏が主張する国体思想(天皇統治の正当性などを唱える思想)に、関心のない支持層も少なくないのではないか。外部からの批判よりも、組織が拡大するにつれて支持層との間にズレが生じ、党がコントロール不能になる可能性もある」と警鐘を鳴らしています。

参議院選挙後も、参政党の動向は日本の政治情勢に大きな影響を与える可能性を秘めており、引き続きその行方が注目されます。


参考文献: