“日本人ファースト”論争:参政党がTBS『報道特集』をBPO提訴へ、その背景と波紋

参議院選挙の期間中に、メディアと政党の間で深刻な対立が表面化した。参政党は2025年7月14日、公式サイトを通じて、同年7月12日に放送されたTBS系『報道特集』の内容が「偏向報道」にあたると抗議。番組側からの回答に納得できないとして、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に申し立てを行う意向を正式に表明した。この動きは、テレビ業界関係者からは「BPOといえば、テレビマンにとっては“泣く子も黙る”存在」と評されるほど、その影響力の大きさが指摘されている。

参政党による「偏向報道」申し立ての経緯

参政党が問題視するTBS『報道特集』の報道は、同党が参院選のテーマとして掲げた「日本人ファースト」に関するものだった。番組内では、参政党の神谷宗幣代表(47)の街頭演説の様子が放送された。その中で神谷代表は、外国人の集団万引き問題に触れ、「おカネがない外国人が来て生活保護をすぐください、そんなものはない、おカネがないなら帰ってください」と発言するシーンが流された。

“日本人ファースト”論争:参政党がTBS『報道特集』をBPO提訴へ、その背景と波紋

番組が提起した「ヘイトスピーチ」の疑念

さらにTBSの山本恵里伽アナウンサー(31)は、外国人差別に詳しい大阪公立大学の明戸隆浩准教授のもとを訪れ、「“日本人ファースト”という言葉がかなり独り歩きしている印象。ヘイトスピーチとは違うのか?」と質問。これに対し明戸准教授は、「一番ヘイトスピーチで重要なところは差別の扇動なんです。差別用語を一切使わずに差別をあおるということ。直接“出てけ”と言っていないと言い訳ができてしまうが、実際にやっていることはその支持層に対して排外主義、ヘイトスピーチをあおる効果、これは言っている側も分かってないわけない」と解説した。山本アナウンサー自身も「社会が決して受け入れてはこなかった排外的な差別的な言葉がSNSで拡散していく。そういった現実に正直凄く戸惑いを感じています」とコメントした。

メディア内外からの反響とTBSの釈明

このような放送内容に対し、他局の報道局ディレクターは「選挙期間中にテレビでここまで偏った主張と、一政党に対して“差別の扇動”などと叩くという放送内容にはびっくりしましたね」と驚きを表明。特に、「どんな思想を持っていようが、どんな宗教を信仰していようが、選挙期間中は特に公平性を最優先します。それ以上に、アナウンサーの私見など絶対に挟ませない。制作サイドとしては、ちょっと考えられないですね」と、報道の公平性に対する懸念を示した。

この件は政治家や元アナウンサーからも反応を呼んだ。NHK党の浜田聡参議院議員は2025年7月14日公開の自身のXで、「山本恵里伽アナを国会に呼んで、この発言に関する説明を求めたい」と投稿。また、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏もニュースサイト『SmartFLASH』の取材に対し、「『報道特集』での山本アナの発言は、僕から観ても100%アウトというレベルでしたね」と厳しく批判した。

FRIDAYデジタルがTBSに対し、参政党のBPO申し立て表明と山本恵里伽アナの発言が物議を醸していることについて質問したところ、TBSは次のように回答した。「今回の特集は、参政党が支持を伸ばす中、各党も次々と外国人を対象とした政策や公約を打ち出し、参院選の争点に急浮上していることを踏まえ、排外主義の高まりへの懸念が強まっていることを、客観的な統計も示しながら、様々な当事者や人権問題に取り組む団体や専門家などの声を中心に問題提起したものです。スタジオ部分も含め、この報道には、有権者に判断材料を示すという高い公共性、公益性があると考えております。」

今後の見通し:選挙後の「遺恨」

今回の参院選で躍進が予測される参政党と、公共性を主張するTBSの間には、選挙後も深い“遺恨”が残る可能性が指摘されている。この論争は、メディアの報道姿勢、政治的公平性、そして社会における差別や排外主義というデリケートな問題提起のあり方について、改めて社会全体に問いを投げかけるものとなった。


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