韓国で急増する中国人向け「黒車」:仁川空港を拠点に横行する違法送迎の実態

「大家好(中国語でこんにちは)。請跟我来(私についてきてください)!」

先月25日午後2時、仁川国際空港第1旅客ターミナルの駐車場にスーツケースを持った8人の観光客が現れた。彼らを出迎えたのは、腰を90度折って深々とお辞儀をする40代の中国人男性だった。数年ぶりに韓国を訪れた団体観光客(游客)を乗せた男性の黒いワゴン車は、周囲を確認するや否や慌ただしく走り去った。ナンバープレートにハングル文字の「ホ」と書かれたそのレンタカーは、運送営業の許可を得ていない違法車両、いわゆる「黒車」だった。夏の休暇シーズンを迎え、仁川国際空港を中心に、中国人観光客を狙った韓国の違法タクシーである「黒車(ヘイチャ)」が猛威を振るっている。

グラフィック:韓国で横行する違法タクシー「黒車」の実態と手口を解説する図グラフィック:韓国で横行する違法タクシー「黒車」の実態と手口を解説する図

夏の観光シーズン、増加する「違法コールバン」の背景

韓国では、大型ワゴンタイプのレンタカーを用いて空港から外国人団体観光客を高額で送迎する「違法コールバン」、つまり無許可のワゴンタクシーが横行している。特に近年、中国国籍の違法ドライバーが急速に増加しており、中国で無登録の違法車両を指す「黒車(ヘイチャ)」という言葉がそのまま韓国にも上陸した形だ。この現象は、今年3月に韓国政府が発表した中国人観光客に対する一時的なビザなし入国許可(今年第3四半期から年末まで)をきっかけに、中国人団体観光客の「游客特需」を狙う違法営業が加速していることが背景にある。

見分けがつきにくい「黒車」の手口と法的問題

タクシーとして登録されていないレンタカーで乗客を乗せ、料金を受け取る行為は韓国の法律で厳しく禁じられている。しかし、これらの違法タクシーは、合法のワゴンタクシーと同じ現代自動車製の11人乗りスターリアや15人乗りソラティなどをレンタカー会社から借りて営業しているため、一般の観光客には見分けるのが極めて困難だ。ただし、合法的なタクシーとして営業するには、国土交通部の許可を得て、黄色いナンバープレートを付けることが義務付けられているが、違法な「黒車」はすべて白いナンバープレートを付けているという決定的な違いがある。この「白ナンバー」が違法営業の証拠となる。

現地取材で見えた「黒車」の巧妙な実態

本紙は先月末から最近まで、韓国人が運転する合法のワゴンタクシーに乗り込み、仁川空港周辺で違法営業を行う中国人ドライバーの追跡取材を行った。先月20日午後3時、仁川国際空港からわずか1.5キロ離れた国際業務団地では、どの路地にも「白いナンバープレートのワゴン」が連なって停車しており、至る所で中国語の話し声が聞こえた。

路地で喫煙していた中国人男性に観光客を乗せているか尋ねると、最初は首を横に振った。しかし、間もなく電話が鳴ると、男性は空港へ向かった。車を追跡すると、空港建物内に入り、直後に中国人観光客9人をワゴンに乗せて走り去った。仁川空港ワゴンタクシー協同組合のイ・ドンウォン理事長は、「中国人ドライバーたちは、取り締まりを避けるために空港近くで待機し、中国からの飛行機の到着時間に合わせて空港に集まり、観光客を乗せていく」と語り、その巧妙な手口を明かした。

主要な目的地と取り締まりへの無視

これらの中国人違法ドライバーにとって馴染み深い目的地は、中国人団体観光客が頻繁に訪れるソウル市内の明洞、東大門、南山、そして乙支路などだ。取材日の午前10時には、東大門歴史公園(ソウル市中区)近くのビジネスホテルの前で、違法なワゴンタクシーがひっきりなしに中国人観光客を降ろしていく様子が見られた。南山ケーブルカーの公営駐車場の近くには、「有償による運送行為の集中取り締まり」と書かれた垂れ幕が至る所に掲げられていたにもかかわらず、中国人ドライバーたちはそれを全く気にしている様子はなく、堂々と営業を続けていた。

観光客の安全と公正な市場維持のために

韓国における中国人観光客を狙った違法な「黒車」の横行は、単なる交通違反に留まらず、観光客の安全を脅かし、合法的な交通業界の秩序を乱す深刻な問題となっている。特に、言葉や現地の事情に不慣れな外国人観光客が標的となるため、適切な料金や安全な移動手段が確保されないリスクが高まる。観光客が安心して韓国を訪れ、公正なサービスを受けられる環境を維持するためには、当局による一層の取り締まり強化と、観光客への情報提供が急務である。

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