サブスクリプション型音楽サービスSpotifyが発表した今年上半期のランキングで、覆面アーティストAdoが「海外で最も再生された国内アーティスト」部門で初の1位に輝きました。Adoは現在、昨年に続き2度目のワールドツアーを展開しており、その活動は国内外で大きな注目を集めています。なぜAdoはこれほどまでに海外を目指し、世界中でその歌声が聴かれているのでしょうか。その背景には、日本の音楽業界全体のグローバル戦略における大きな変化があります。
Ado、海外再生数約8割の快進撃
Spotifyの上半期ランキングにおいて、Adoはこれまで4年連続で首位を守ってきたYOASOBIの牙城を崩し、見事1位を獲得しました。特筆すべきは、その再生比率の高さです。スポニチアネックスの2025年7月9日付記事によると、Adoの楽曲は海外での再生が約8割にも達していると報じられています。これは、彼女の音楽が国境を越え、広範なリスナーに受け入れられている明確な証拠と言えるでしょう。
世界を舞台に活躍する覆面アーティストAdo
日本音楽業界、グローバル市場への転換点
これまでの日本の流行歌、すなわち昭和歌謡から近年のJ-POPに至るまで、その多くは国内市場に焦点を当てて制作されてきました。しかし、特にここ数年の間で、日本のアーティスト、そして音楽業界全体が明確に海外市場へと目を向けるようになりました。この動きは、日本の音楽産業における大きな転換点を示しています。
その最も顕著な例の一つが、日本人アーティストによる海外公演の積極的な展開です。YOASOBIや藤井風といった人気アーティストが代表的ですが、彼らは単発の公演に留まらず、欧米、アジア、中南米など世界各地を巡る長期かつ大規模なワールドツアーを敢行しています。これは、かつては一部のアーティストに限られていた海外進出が、今やより多くの才能にとって現実的な選択肢となっていることを意味します。
グローバル化を後押しする音楽アワードの誕生
こうしたグローバルな潮流をさらに後押しするため、日本の音楽業界は新たな体制を整え始めています。その象徴が、今年から創設された音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN (MAJ)」です。NHKで生中継された授賞式をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。日本版グラミー賞を目指し、60以上の多岐にわたる部門が設けられたMAJは、特に海外で人気を博したアーティストや楽曲を表彰する部門を多く設けている点が特徴です。
例えば、「Bling-Bang-Bang-Born」で最優秀楽曲賞を受賞したCreepy Nutsは、同曲で「Top Japanese Song in North America」や「Top Japanese Song in Europe」といった海外関連部門でも多数の賞を受賞しました。また、YOASOBIの「アイドル」は「Top Global Hit from Japan」を受賞するなど、日本の音楽が世界でいかに浸透しているかを示す具体的な実績が次々と表彰されています。
まとめ:進化するJ-POPの国際戦略
AdoのSpotifyランキング首位獲得は、単なる一アーティストの成功に留まらず、日本の音楽業界がグローバル市場を本格的に意識し、戦略的に海外展開を進めている現状を象徴しています。アーティストの積極的なワールドツアー、そしてMAJのような業界全体のバックアップ体制の構築は、J-POPが世界的な音楽ジャンルとして確立されつつあることを示唆しています。今後も日本のアーティストが世界を舞台にどのような活躍を見せるのか、その動向から目が離せません。
参考文献
- Spotify Japan公式発表
- スポニチアネックス (2025年7月9日). 「Ado、海外再生比率8割! SpotifyでYOASOBI超え初V」
- MUSIC AWARDS JAPAN (MAJ) 公式ウェブサイト