今年の参議院選挙において、一躍注目を浴びた参政党が繰り返し訴えた「日本人ファースト」という主張は、物価高対策としての減税や現金給付と並び、「外国人問題」を主要な争点の一つとして浮上させました。こうした議論の中で、「外国人は優遇されている」「犯罪者が多い」「土地を買い占めている」「医療費を不正受給している」といった、根拠に乏しい排外主義的な発言が頻繁に飛び交い、一部のNGOからは懸念の声が上がり声明が出される事態となり、メディアもファクトチェックを通じてその情報の検証に乗り出しています。果たしてなぜ今、これほどまでに「外国人排斥」を求める声が強まっているのでしょうか。
排外主義の台頭:過去と現在の潮流
3年前の参議院選挙当時、私は自身のYouTube番組で「ミニ政党」の代表者たちに積極的に取材を行っていました。その中の一人が、かつて活発な嫌韓デモを展開した団体「在日特権を許さない市民の会」の設立者である、当時の日本第一党党首、桜井誠氏です。彼が立ち上げた日本第一党は、「日本第一主義」を掲げ、明確な移民排斥や帰化基準の厳格化を訴えていました。当時の日本第一党は、いわゆる泡沫政党に過ぎず、その後の党勢の衰えからか、今年の参議院選挙には参加していません。
しかし、その「日本第一主義」から名称を変えただけにも見える「日本人ファースト」というスローガンが、今や多くの人々の共感を呼んでいます。これに呼応するかのように、外国人を敵視する姿勢を明確にする候補者も増加しました。私が今年の参議院選挙で参政党以外に注目したのは、無所属で東京都選挙区から立候補した平野雨龍氏と吉永アイ氏という2人の女性候補です。
参議院選挙で注目された参政党の集会風景。党が掲げる「日本人ファースト」のスローガンが支持を集める背景にある社会の動きを示す。
外国人問題の背景と具体的な課題
ご存じない方も少なくないかもしれませんが、平野氏は以前から着物姿で過激な「反中」街頭演説を繰り返してきた人物です。香港の雨傘運動に参加していた交際相手を支援する中で、自身も反中思想を強めていったと言われています。一方の吉永氏は元中国籍の人物で、今年6月の都議会議員選挙にも出馬しましたが落選しました。「日本人を守るための外国人政策を」と日本国民に訴える一方で、中国のSNS上では「在日中国人のために」と発言し、「二枚舌」であるとの批判も招きました。彼女たちが最終的にどれほどの票を獲得し、その結果が何を意味するのかは、今後の社会動向を読み解く上で重要な指標となるでしょう。
こうした「外国人排斥ブーム」の背景には、国内における経済格差の拡大、生活水準の低下、そして外国人居住者の増加が深く関連していると容易に想像できます。実際に、私たちの日常生活の中で外国人の姿を目にすることは決して珍しくなくなりました。彼らを社会問題のスケープゴートにしたいと考える気持ちも理解できないわけではありませんが、日本が本当にここまで心の狭い国になってしまったのかと考えると、残念でなりません。
確かに、一部の在日中国人の中には素行の悪い者たちが存在し、私自身も彼らの行動に対して強い憤りを覚えることがあります。例えば、マンションのオーナーとなった外国人が既存の入居者を追い出すために不当に賃料をつり上げたり、大学入試で不正行為を働いたりするような行為は、社会の反感を買って当然です。また、外国人による土地の買い占め問題については、国家の安全保障の観点からも、何らかの監視や規制が喫緊に必要であると認識されています。
「外国人優遇」説の検証と大多数の現実
しかし、「外国人優遇」という主張の大部分は、事実に基づかない言いがかりに過ぎません。メディアによるファクトチェックや調査によれば、外国人に対して不当な優遇措置が講じられているという具体的な根拠はほとんど示されていません。実際には、日本に暮らす大多数の外国人は、日本の法律を遵守し、適切に税金を納め、ごく普通の日常生活を送っています。彼らは日本の社会経済活動の一員として、重要な役割を担っているのです。
今回の参議院選挙で外国人問題が大きな争点となったことは、日本社会が抱える複雑な課題を浮き彫りにしました。格差や不満といった社会のひずみが、外国人への排斥感情という形で表出している側面があるのは確かです。しかし、一部の具体的な問題行為と、日本に暮らす大多数の外国人を同一視し、排外主義に傾倒することは、多様性を尊重し、国際社会との協調を目指す日本の未来にとって、決して建設的な道ではありません。私は、日本人が根本的に排外主義に大きく傾くことはないと信じています。社会が直面する課題を外国人だけに押し付けるのではなく、日本人自身が具体的な問題解決に向けて賢明な議論を深めていくことが、今後の日本社会に求められています。