2025年7月20日に投開票が行われた参議院選挙は、自民・公明両党が過半数を割る大敗を喫し、新興政党である国民民主党や参政党の躍進が顕著に表れる結果となりました。この激動の選挙戦後、各テレビ局では選挙特番が組まれ、特にテレビ朝日系列で放送された『選挙ステーション2025 & 有働Times』では、番組中盤で参政党の神谷宗幣代表(47)と大越健介キャスター(63)との間で、代表の過去の「問題発言」を巡る白熱した議論が展開されました。このインタビューは、選挙期間中に物議を醸した神谷代表の言動が、改めて社会的な焦点となる一幕となりました。
参議院選挙特番で議論を交わす大越健介キャスター。
参政党と神谷代表の物議を醸した発言の背景
今回の参院選において「日本人ファースト」をキャッチコピーに掲げた参政党は、その政策や主張と共に、代表である神谷宗幣氏の発言が度々メディアやSNSで取り上げられ、物議を醸してきました。投開票直前の7月18日には、神谷氏が街頭演説中に朝鮮人を差別する言葉を使用し、その場で訂正したものの、強い批判の声が集まっていた経緯があります。
テレビ朝日『選挙ステーション2025』の番組内で、大越健介キャスターは、これまで多くの有権者を引き寄せた一方で、反発も招いた神谷氏の発言について切り込みました。大越キャスターが特に言及したのは、7月3日の街頭演説における「高齢の女性は子どもが産めない」「人口維持には若い女性に子供を産みたいという社会状況を作らないといけないが働け働けとやり過ぎた」という一連の発言でした。
「当たり前」発言への大越キャスターの疑問
大越キャスターは、神谷代表のこの発言に対し「なぜ反発を招いたと思いますか?」と問いかけました。これに対し神谷代表は、「それが正しいと思い込んでいる人が結構いたからではないでしょうか。私は(発言を)訂正する気も、謝罪する気も一切なくてですね。当たり前のことをしっかり問題提起したと思ってますので、国会でも引き続き同じテーマで訴えていきたいと思います」と、自身の見解を曲げることなく応じました。
しかし、神谷氏の「当たり前」という言葉に納得しなかった大越キャスターは、自身の見立てとして「私の見立てですけれども、この発言、”女性というのは子供を産んで、家に入って子育てに専念すべき”だという固定観念に縛られているのではないかなという風にも聞こえました」と、発言に潜む可能性のあるジェンダーバイアスを指摘し、改めて疑問を投げかけました。
神谷代表の反論と大越キャスターの追及
大越キャスターの指摘に対し、神谷代表は笑顔を浮かべながら次のように否定しました。「違いますね、それは私は何回も否定してますし、うちの妻も働いてますし。私は男性が家庭に入ることも全然オッケーだという感じなので。かなり私はその辺はニュートラルですから、男尊女卑的っていうのはちょっと語弊があると思いますし、それはイメージが作られているなと思います」。自身が男尊女卑的な考えに囚われているという見方を強く否定し、誤解であるとの認識を示しました。
それでも大越キャスターは追及の手を緩めることなく、「つまり取り消しもされないし、謝罪もされないということですけれども、正しく理解されないんであれば、もうちょっと説明が必要なんじゃないですか?」と、発言の真意が伝わらないことに対する説明責任を求めました。神谷氏が答えようとしたその瞬間、大越キャスターはさらに「心の領域に入り込む問題なので」としつつ、神谷氏の発言が「そのメッセージというのは非常にネガティブに響いて、ときによってある人を傷つけるかもしれません。それはどう思いますか?」と、言葉が持つ影響力について一息に問い詰めました。
「誰かが傷つく」リスク覚悟の政治家の発言
大越キャスターの問いに対し、神谷代表は「でも、何を言っても誰か傷つく人はいますね」と語り、続けて「1億2000万人すべての気持ちに寄り添っていると何もなくなってしまうので、それはある程度、リスクも覚悟のうえで政治家は発言していく必要があると思っています」と、政治家としての発言には一定のリスクが伴うとの考えを表明しました。
この神谷氏の発言に対し、大越キャスターは「リスクを覚悟の上と仰いますけれども、政治家の発言というのは、そうしたリスクも配慮して発言をしていくっていうのが大事なんではないですか?」と異論を呈し、政治家としての公共性や影響力に対する配慮の重要性を強調しました。これに対し神谷氏は、「配慮しすぎて政治家の発言が削られて、何言ってるかわかんないというようなところに国民は不満を持っているので。少し反発があったとしてもですね、私は別に高齢女性を差別する意図は全くないですし、生物学的に高齢になったら女性は子供を産めなくなるんですね。男性はもとから産めませんしね。そういったことをただ説明しただけなので、それは傷つくからって言われても私は困ってしまうなと思っています」と、自身の主張を堅持する姿勢を見せました。
激しい質疑応答の結末と今後の展望
大越キャスターは、自身の考えを曲げない神谷代表に対し、「神谷代表の仰ることというのは、なかなかこれまで言えないことをスカッと言ってくれると。非常に溜飲が下がるんだという支持者の方がたくさんいらっしゃいました。これは非常に政治家として大事な資質じゃないかと思います」と、その資質の一面を評価しました。
しかし同時に、「ただ、そうなると少し過激な発言の連続になりやしないかという懸念を感じたんですけれども。そういう懸念をいっぱい受けたと思うんですね。その辺どう思っています?」と、その「スカッとする」発言が時に過激化する可能性について懸念を表明しました。これに対し神谷代表は、「自分が間違えた発言をしたなと思うときは訂正もしてますし、謝ることもします。ただ、先ほどのように違う解釈をされると、『いや、それは違いますよ』ということをちゃんと言っていかないといけないと思うので。それはケースバイケースで柔軟にやりたいと思います」と述べ、発言の責任と柔軟な対応のバランスを模索していく意向を示しました。
参議院選挙で躍進した参政党と、その中心人物である神谷宗幣代表。今回のテレビインタビューにおける大越健介キャスターとの激論は、特定の「問題発言」を巡るものでしたが、それは同時に、政治家が国民に何を語り、どのように受け止められるべきかという、より普遍的な問いを投げかけるものでした。新興政党の台頭は、既存の政治やメディアに対する国民の不満の表れとも捉えられますが、その発言がもたらす影響や、誤解を生む可能性に対する政治家の責任は、今後も議論の対象となるでしょう。この激しい質疑応答は、日本の政治言論が新たな局面を迎えていることを示唆しています。
参考文献
- Yahoo!ニュース: 「参院選激論!大越健介キャスター、参政党・神谷宗幣代表に“問題発言”を追及」 (2025年7月21日掲載)
https://news.yahoo.co.jp/articles/172639e17eb689b9fc21a4d148f1468f5e8015e8 - 時事通信社 (写真提供元)