自民党と公明党が参議院選挙で過半数割れに追い込まれた翌日の21日、石破首相(自民党総裁)は正式に続投を表明しました。昨秋の衆議院選挙に続く惨敗を喫しながらも退陣を否定した石破首相の決定に対し、有権者からは厳しい批判の声が上がり、また党公認で選挙戦を戦った関係者からも「責任を取らないのはおかしい」と反発が広がっています。
石破首相の続投表明とその背景
21日午後2時から東京・永田町の自民党本部で開かれた記者会見で、石破首相は冒頭、「自民党総裁として深くおわび申し上げる」と静かに語り、頭を下げました。その後の質疑応答では、自身の進退や責任論に関する質問が集中しましたが、首相は「喫緊の課題がたくさんあり、責任をもって対応しなければならない」と繰り返し強調しました。また、党役員人事や内閣改造の可能性も否定し、約30分間の会見をわずかな笑みを浮かべて終えました。
参院選惨敗後、続投を表明する石破首相の会見を見る街頭テレビの様子
有権者からの厳しい声
首相の会見をテレビで視聴した千葉県船橋市の43歳会社員男性は、「首相だけでなく、党幹部が誰一人責任を取らないなんて信じられない」と憤りを隠しませんでした。長年自民党を支持してきたこの男性は、収束が見通せない物価高への対応に強い不満を抱き、今回は他党候補に一票を投じたといいます。「食料品も何もかも値上げ続きなのに、一向に対策が進まない。与党は選挙結果を真剣に受け止め、市民生活に向き合ってほしい」と訴えました。
横浜市の68歳不動産業男性も同様に、「このまま政権を維持しても次の国政選挙で大敗するだけだ」と悲観的な見通しを示しました。特に米国との関税交渉については、「良い条件を引き出せておらず、交渉のやり方や姿勢に問題があるのではないか」と指摘し、「30年間にわたり経済を停滞させてきた政権には期待できない」と厳しく批判しました。
身内からも上がる退陣要求
今回の選挙結果に対する責任を問う声は、自民党の「身内」からも聞かれました。長らく自民党の牙城であったにもかかわらず、現職の清水真人氏(50)が参政党新人に激しく追い上げられた群馬選挙区(改選定数1)では、県連幹部が少数与党での国会運営の困難さに言及し、「レームダック(死に体)になるのは目に見えている。潔く引いた方が良い」と首相を批判しました。
また、山口県連の友田有幹事長は、山口市内で報道陣の取材に対し、「石破総裁自身が国民から信を得られなかった。まず代わるべきは総裁だ。その次に、新しい体制でしっかりと国民の皆様方の意見を伺うということだ」と述べ、公然と石破総裁の退陣を求めました。
首相地元・鳥取からの擁護論
一方で、石破首相の地元である鳥取では、擁護する声も上がっています。比例代表選で3選を果たした舞立昇治氏(49)は、鳥取市で開かれた報告会で、「非常に厳しい政権運営が予想されるが、石破政権をしっかりと支えていきたい」と語り、地元からの支持を表明しました。
まとめ
参院選での歴史的な敗北にもかかわらず、石破首相が続投を表明したことは、自民党内外に大きな波紋を広げています。物価高への不満を抱える有権者や、政権の今後を危惧する党内幹部からは退陣を求める声が相次ぐ一方で、地元からは首相を支えようとする動きも見られます。多様な意見が交錯する中、石破政権は国民の信頼を回復し、喫緊の課題にどう向き合っていくのか、今後の政権運営は極めて困難な局面を迎えることになりそうです。