世界で加速する右派政党の台頭:参政党の躍進と欧米の政治潮流

近年の世界的な政治動向として、右派政党の台頭が顕著である。特に日本では、参議院選挙を控えた参政党が「日本人ファースト」を掲げて旋風を巻き起こしている。この現象は、米国や欧州で先行する右派ポピュリズムの波が東アジアにも及んだ象徴的な出来事と評価されており、その背景には経済的・アイデンティティ不安といった共通の社会経済的要因が存在する。

日本の「参政党」にみる右派の主張と躍進

参政党は「日本は、天皇のしらす(治める)君民一体の国家である」を掲げた日本憲法改正草案の第1条1項を打ち出すなど、独自の保守的価値観を強調している。その憲法改正案では、天皇の詔勅、総理など内閣や憲法・法律に対する天皇の裁可権限を規定する一方で、平等権の削除を提唱している。同党は「自国民優先」「反移民」「国境封鎖」などを唱え、従来の主流政治の失敗に食い込む形で制度圏政治への進入を図る。参議院選挙では14議席を確保する勢いを見せ、その躍進は世界の右派旋風が日本にも到達したことを示唆している。

参政党の神谷宗幣代表が「日本人ファースト」を掲げ、参院選に向けた応援遊説を行う様子。右派政党の台頭を象徴する一枚。参政党の神谷宗幣代表が「日本人ファースト」を掲げ、参院選に向けた応援遊説を行う様子。右派政党の台頭を象徴する一枚。

欧州を席巻する右派旋風の現状

欧州では昨年から右派の勢いが強まっている。ドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」が2月の総選挙で20.8%を得票し第2党となり、与党だった社会民主党(SPD)は第3位に転落する衝撃的な敗北を喫した。AfDのアリス・ワイデル共同党首は「私たちは国家のための合理的な政策を追求している」と述べ、右翼政党という非難を一蹴している。

フランスの国民連合(RN)は、すでに既成政党としての地位を確立した事例だ。2012年の最初の総選挙では2議席にとどまったが、昨年7月の総選挙では143議席を獲得した。洗練されたフランス語とマナーのジョルダン・バルデラが代表を務め、「右翼」に漂うアスファルトのイメージも払拭されつつある。

創党7年目の英国の新生政党リフォームUKは、5月の地方選挙・下院補欠選挙で圧勝した。先月の世論調査では、もし今総選挙が実施されればリフォームUKが労働党や保守党などを抑えて第1党を占めるという結果が出た。こうした状況の中、一部の保守党出身の重鎮議員が相次いでリフォームUKに党籍を移す動きも見られる。このほか、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、イタリアでも右派政党が総選挙で第1党または最大野党に浮上。欧州連合(EU)でも、各国右派政党が集まった政治グループ「アイデンティティと民主主義」(ID)が勢力圏を形成している。

米国における「MAGA」と右派ポピュリズムの震源地

米国は右派政党の「震源」であり「増幅地」とされる。ドナルド・トランプ大統領が掲げた「米国を再び偉大に(Make America Great Again、MAGA)」は、各国の右翼がこれを変奏し、右派政党の共通標語として広く拡散している。トランプ氏は20日、トゥルース・ソーシャルにて「今日の米国は世界中で最も人気があり、最も尊敬される国になった」と自評した。

世界的右派台頭の背景にある共通要因

これらの政党は「日本人ファースト」(日本参政党)、「反イスラム」(ドイツのための選択肢)、「移民取り締まり」(英リフォームUK)など、似た政策や標語を掲げている。その誕生の背景には、物価高、賃金の停滞、住居の不安といった経済的な要因と、移民者の流入によるアイデンティティ不安という共通の課題が存在する。ロイターは、これを「経済不安定の中で住民の不満を結集したメッセージ」と報じている。

右派の急浮上は「反エリート情緒の拡張」であり、「従来の主流政治の失敗に対する有権者の警告」という解釈も出ている。英政治評論家のデビッド・グッドハート氏はザ・タイムズ紙で、「従来のエリート中心の政治が地域基盤の中産層を疎外させた」とし、「左派の福祉政策と右派の国境・移民統制を結合したポストリベラル(post-liberal)なアプローチが必要だ」と指摘した。ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、「労働者階層の経済的不安と移民問題、主流政治に対する失望が右傾化を触発した」と分析している。

結論

世界中で加速する右派政党の台頭は、経済的、社会的、そしてアイデンティティの不安が複合的に絡み合った結果であり、既存の政治体制に対する有権者の強い不満と変革への欲求を示している。日本における参政党の躍進も、この世界的な潮流の一部と見なすことができる。今後もこの政治潮流が各国の政策や国際関係に与える影響は大きく、引き続きその動向が注視される。

参照元

  • ロイター
  • ザ・タイムズ
  • ウォールストリートジャーナル(WSJ)
  • 神谷宗幣 X(旧ツイッター)