7月20日に投開票が行われた参院選東京選挙区において、32名の候補者がしのぎを削る激戦の中、新人のさや氏が66万8568票を獲得し、2位で初当選を飾りました。国政初挑戦ながら、その政治理念と発言、そして背後にある人脈が大きな注目を集めています。特に、参政党が掲げる「日本人ファースト」の訴えや、「核武装が最も安上がりで安全を強化する策の一つだ」といった物議を醸す発言は、選挙戦を通じて大きな話題を呼び、参政党の躍進を牽引しました。さや氏とは一体どのような人物で、その当選の背景にはどのような要因があったのでしょうか。
参院選東京選挙区で躍進したさや氏の政治的背景
参院選東京選挙区でのさや氏の躍進は、多くの有権者に強い印象を与えました。国政経験がない中で、これほどの得票を得て当選に至った背景には、彼女が前面に打ち出した「日本人ファースト」という独自の政策スローガンと、タブー視されがちな「核武装」に関する明確な発言が挙げられます。これらの主張は、従来の政治に閉塞感を抱く層や、より強い国家像を求める有権者に響いたと考えられます。
歌手から政治の舞台へ:さや氏のこれまでの歩みと人脈
さや氏は横浜市出身の43歳で、青山学院女子短期大学を卒業しています。彼女のこれまでのキャリアは多岐にわたり、「saya」の名で歌手活動を行ってきた実績があります。また、保守系の言論番組である「日本文化チャンネル桜」ではキャスターを務めるなど、言論活動にも積極的に関わってきました。
政治との接点は、2014年の東京都知事選にまで遡ります。この時、さや氏は元航空幕僚長の田母神俊雄氏を支援し、田母神氏を支える「田母神ガールズ」の一員としても知られていました。興味深いことに、田母神氏は2024年の東京都知事選にも出馬しており、その際には参政党の神谷宗幣代表が応援に駆けつけるなど、参政党が田母神氏を支援する構図が見られました。さや氏が参政党に入党したのは選挙間際だったとされており、こうした長年の人脈が、彼女の参政党からの立候補に繋がったとみられています。
経済評論家・三橋貴明氏との関係性とその影響力
さや氏の今回の出馬と選挙戦に、もう一人深く関わっていたのが経済評論家の三橋貴明氏です。三橋氏は自身のYouTubeチャンネル「三橋TV」を開設しており、さや氏はこの番組にレギュラー出演してきました。さらに、さや氏の後援会「清(さや)の会」は、三橋氏が所長を務める経世論研究所内に事務局を置いています。三橋氏は自身のブログで、さや氏について「コロナ禍以降、収入が超不安定になってしまったため、弊社の社員になってもらった」と明かしており、経済的な支援も行ってきたことが伺えます。
参院選東京選挙区で初当選した参政党さや氏と経済評論家・三橋貴明氏。両氏の関係性と政治への影響力を示す。
経世論研究所のウェブサイト内では、「シンガーsayaの3分間エコノミクス」と題し、さや氏による経済に関する有料解説動画が販売されています。そのトップ画像では、さや氏がメガネをかけている姿が確認できます。三橋氏は過去に自身のブログで、MMT(現代貨幣理論)を提唱したステファニー・ケルトン教授の言葉を引き合いに出し、「MMTの眼鏡に掛け替えてください」と呼びかけたことがあります。
メガネをかけた参政党さや氏。三橋貴明氏が提唱する現代貨幣理論(MMT)を政策の柱とすることを示す象徴的な一枚。
MMTは、伝統的な金融論においては“異端”とみなされることもありますが、さや氏が掲げる「非合理な基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標を破棄します」「日本には『国の借金で財政破綻する』といった財政問題は存在しません」といった主張の論拠となっていると考えられます。さや氏が三橋氏と似たような眼鏡をかけることは、三橋氏の経済思想を深く内面化していることの表れだと解釈することもできます。三橋氏のさや氏に対する並々ならぬ力の入れようは、応援演説での「東京からさやさんが立候補してくださいました。さやさんは確かに華奢で見目麗しいですけれども、頭の中が『三橋貴明』だからね!」という独特な表現からも見て取れます。
まとめ:新時代の政治家と影響力の構造
参院選東京選挙区で鮮烈なデビューを飾った参政党のさや氏の当選は、その個性的な経歴と政策、そして経済評論家・三橋貴明氏との緊密な関係性抜きには語れません。歌手から保守系言論人、そして国会議員へと転身した彼女の背景には、田母神俊雄氏との縁や、参政党という新興勢力との結びつき、さらに三橋氏からの多岐にわたる支援がありました。特に、MMTを根拠とする経済政策の主張は、今後の日本政治において新たな議論を巻き起こす可能性を秘めています。さや氏の存在は、既存の枠にとらわれない新しい政治家の台頭と、その背後で影響力を持つ言論人の役割を浮き彫りにしています。
参考文献: