中国当局は、近年急増するショートフォーム形式のウェブドラマにおける抗日戦争の過度な誇張表現に対し、本格的な取り締まりに乗り出しました。これは、歴史的事実の歪曲や若年層の価値観形成への悪影響を懸念しての措置です。
中国官営の環球時報が22日に報じたところによると、放送・インターネットコンテンツを管轄する国家広播電視総局(広電総局)は21日、抗日戦争テーマのショートドラマに関する新ガイドラインを発表。「一部ドラマは、極端な人物設定や刺激的なストーリーにより、『神劇』と呼ばれる非現実的な印象を与える」と指摘しました。「抗日神劇」とは、日中戦争での中国軍の活躍が超人的に描かれ、現実離れした描写がなされる作品への皮肉です。例えば、石や矢で日本軍の戦車や戦闘機を破壊したり、武侠小説のような超現実的な武術で敵部隊を全滅させる場面が典型例です。
広電総局は、これら問題作について「抗日戦争の実際の歴史を解体し、荒唐無稽な物語に仕立て上げており、特に少年の健全な価値観形成にとって有害である」と見解を示し、コンテンツ管理・監督強化を求めました。具体的には、「現代技術や知識技能の戦場への乱用」「主人公の個人的能力の過剰な設定」「軍事的常識から逸脱した『奇異な功績』『神業』の強調」を避けるよう明記。「我が軍はスーパーマン、敵は愚か」といった幼稚なストーリー、家族・国家の物語を個人的復讐に矮小化する創作パターン、歴史的論理を無視した民族の大義強調も排除すべきと強調しました。
誇張された抗日戦争ドラマの戦闘描写を示すイラスト
今回の広電総局の動きは、歴史認識の正確性を保ち、国民、特に若者の歴史観を健全に育成しようとする中国政府の強い意志を反映しています。ショートドラマ市場の拡大に伴うコンテンツの質の低下や倫理観の欠如に対し、当局が厳格な姿勢で臨む方針が明確になりました。
参考資料
- Yahoo!ニュース: 中国当局、抗日戦争ドラマの「誇張表現」に規制強化 「神劇」排除へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/d44c0e23356312f5b291043d715ef9cb9604aa04