フランスの名門教育機関であるリール政治学院が、パレスチナ自治区ガザ地区出身の女性学生に対し、そのソーシャルメディア投稿を理由に入学許可を取り消したと発表しました。フランスの内相が「憎悪に満ちている」と評したこの投稿は、国際社会における反ユダヤ主義と表現の自由の問題に新たな議論を提起しています。
この決定は、同女性がユダヤ人殺害を呼びかけるメッセージをリポストしたスクリーンショットがソーシャルメディア上で公開されたことを受けてのものでした。
ガザ出身学生の入学取り消しと経緯
問題の女性学生は、在エルサレム・フランス領事館の推薦を受けてリール政治学院への入学をオファーされていました。しかし、SNSでの過去の投稿が明るみに出たことで状況は一変しました。リール政治学院は、教育省および地方当局との協議の結果、この女性の入学予定を取り消すことを決定したと公式X(旧ツイッター)アカウントで発表しました。同学院は、女性の投稿の一部が「あらゆる形態の人種差別、反ユダヤ主義、差別、そしてあらゆる集団に対する憎悪煽動にも反対するリール政治学院の価値観と真っ向から反している」と強調しています。これを受けて、女性名義のアカウントは閉鎖されました。
当初、この女性学生はフランス外交官の勧めもあり、恒久的な住居が見つかるまでの間、リール政治学院の学長の自宅に滞在していました。この異例の状況も、今回の入学取り消しが大きな注目を集める一因となっています。
フランス・リール政治学院の外観、2024年5月2日撮影。ガザ出身学生の入学取り消しを決定した名門大学の建物。
フランス政府閣僚らの強い非難
今回の事態に対し、フランス政府の閣僚らも強い怒りと懸念を表明しました。ジャンノエル・バロ外相は、「フランスに、反ユダヤ主義的な発言をするガザの学生の居場所はない」と述べ、今回の問題に関する「関係省庁の担当部局による調査は明らかに機能していなかった」として、内部調査を命じたことを明らかにしました。これは、推薦プロセスにおける審査体制の不備を示唆するものです。
さらに、ブリュノ・ルタイヨー内相は、当該の「憎悪に満ちた」アカウントの即時閉鎖を要求し、地方当局に対し法的措置を取るよう指示しました。ルタイヨー内相は自身のXアカウントで、「わが国には、(イスラム組織)ハマスのプロパガンダを行う者の居場所はない」と断固たる姿勢を示し、国内におけるヘイトスピーチやテロ組織への支持に対し、一切の容赦をしないという政府の強い意志を表明しました。
結論
今回のリール政治学院によるガザ出身学生の入学取り消しは、ソーシャルメディア上での発言が個人の将来や国際的な教育機会に与える影響の大きさを改めて浮き彫りにしました。同時に、フランス政府が反ユダヤ主義、人種差別、そしてテロ組織のプロパガンダに対し、教育機関と連携して断固たる姿勢で臨むという明確なメッセージを発しています。これは、多様性と包括性を重視する国際社会において、ヘイトスピーチがいかなる形であれ許されないという原則を再確認する事例と言えるでしょう。
参考資料
- AFPBB News, Yahoo!ニュース: リール政治学院、ガザ出身女性の入学許可取り消し 内相が「憎悪に満ちている」と呼んだ投稿が理由. (2024年5月30日公開記事)