中国でチクングニア熱が急拡大、WHOが世界的流行に警鐘

中国南部、特に広東省において、チクングニア熱の感染者が5000人近くに迫る勢いで急増しており、現地防疫当局が厳戒態勢で対応に当たっています。デング熱やジカウイルス感染症と同じく蚊が媒介するこの感染症に対し、世界保健機関(WHO)もその世界的流行の可能性に警鐘を鳴らしており、国際社会もその動向を注視しています。

広東省における感染状況と中国当局の対策

29日の星島日報など海外メディアの報道によると、今年、中国南部の広東省内12都市でチクングニア熱感染者が4824人発生したと集計されました。感染者の大半は広東省仏山市に集中しており、香港に隣接する深圳市でも感染事例が確認されています。

広東省疾病対策センター(CDC)は、感染者に重症者や死亡者はなく、全て軽症であると公表しています。しかし、さらなる感染拡大を阻止するため、市民に対しては防虫網の設置や長袖・長ズボンの着用を勧告。水耕栽培植物の受け皿や古タイヤ、空き缶など、蚊が繁殖しやすい溜まった水を定期的に点検し、リスク要因を事前に徹底除去するよう強く呼びかけています。

感染拡大の背景にある蚊の繁殖

当局の調査では、蚊の繁殖密度が高い地域で感染事例が多く判明しています。防疫当局は、基準値を超過した高密度の蚊の生息地を計21カ所で特定。うち16カ所では成虫の蚊が、5カ所では幼虫が大量に発見され、徹底的な駆除が急務とされています。

チクングニア熱の基本情報:症状と感染経路

中国でチクングニア熱を媒介するネッタイシマカまたはヒトスジシマカのイメージ中国でチクングニア熱を媒介するネッタイシマカまたはヒトスジシマカのイメージ

チクングニア熱は1952年にタンザニアで初めて確認された感染症です。主にネッタイシマカヒトスジシマカがウイルスを媒介します。蚊が感染者を吸血後、ウイルスが蚊の体内で複製され、唾液腺にたまった後、再び人を刺す際に伝播します。主な症状は、急性発熱や深刻な関節の痛みなどです。

高リスク層への注意と国際的な防疫協力の必要性

現在のところ、チクングニア熱のヒトからヒトへの直接的な感染事例やその証拠は確認されていません。しかし、65歳以上の高齢者や高血圧・心臓病などの基礎疾患を持つ人々は合併症のリスクが高まるため、特に注意が必要です。致死率は1%未満と比較的低いものの、現時点では確実なワクチン治療薬が存在しません。このため、防疫体制が崩壊すれば地域社会全体での感染拡大に繋がる高いリスクをはらんでおり、国際社会全体での協力と監視が求められています。

参考文献:
Yahoo!ニュース「中国チクングニア熱感染者5000人迫る…WHO、世界的流行の可能性警告」