先の参議院選挙では、急増する外国人への懸念や不安を背景に「外国人対策」が主要な論点の一つとなりました。「日本人ファースト」を掲げて躍進した参政党に対し、その主張を「排外主義」の台頭と見る向きもあり、政治的見解の「右」と「左」の間で意見が大きく割れています。東京新聞の望月衣塑子記者がこのテーマを巡り、候補者、支援者、さらにはアンチ勢力にまで取材を重ねた結果、「右左関係なく記者が交わることが大切」という見方が示され、多様な視点から問題への理解が深まる示唆が得られました。
参政党が掲げる「日本人ファースト」の真意と大衆の支持
2025年7月19日夜、参政党の神谷宗幣代表が「最後の訴え」を行った東京・芝公園には、主催者発表で約2万人もの人々が集まりました。演説中、会場では「人権ファースト」「ナチス」「ヘイト集団」といったプラカードを掲げた集団が大声を上げる場面も見受けられました。
2025年7月19日、東京都港区芝公園で行われた参政党の最終街頭演説で、多くの支援者とプラカードを掲げたアンチが混在する様子。参院選の外国人政策に関する議論の場が示されている。
これに対し、神谷氏は「今、こうやって『ヘイトだ』とやっている人も、いつか『参政党があってよかった』と言ってもらえるようにしたい」と述べ、自身の立場を表明しました。さらに、「誰かを追い出そうとか、排除しようとかではない。誇りを持って子供が日本人に生まれてよかったといえるような国にしたい」と、党の掲げる「日本人ファースト」が排他的なものではないという認識を明確に示しました。演説を聞いていた女性の一人は、子供を連れてきた理由として「アンチの方もメチャクチャいて、子供を連れてくるのはどうかと思ったが、子供にも『日本はまだ元気でまだやれる』という姿勢を見せたかった」と語り、参政党を「排外主義」と結びつける見方に疑問を呈しました。
「排外主義」と「グローバリズム批判」の間の溝
参政党の最終街宣では、演説終了後に会場後方で大声を上げていたアンチ集団が最前列に集結し、「レイシスト帰れ!」「レイシスト帰れ♪」といったコールを参政党のスタッフに向けて浴びせ続ける場面がありました。
神谷氏のスピーチでは「外国人の個人を批判したり差別したりしているのではない。グローバリズムの仕組みに意見を言っている」と明言されており、もしこの発言を覆す行動が確認されれば糾弾されるべきでしょう。しかし、現時点で「レイシスト(人種差別主義者)」という言葉を投げかける行為には、彼らの主張と批判の間に存在する認識の乖離が浮き彫りになります。このような緊迫した、ある意味でストレスを感じる空間について、望月記者は「見るべきだ」と語っており、異なる主張が交錯する現場を直接体験することの重要性を強調しています。
東京新聞の望月衣塑子記者。参院選の外国人対策を巡る政治対立を取材し、左右関係なく記者間の交流の重要性を訴えるジャーナリスト。
結論
今回の参院選における「外国人対策」を巡る議論は、参政党の躍進と「排外主義」を巡る対立が示すように、日本の政治・社会が直面する複雑な課題を浮き彫りにしています。参政党が強調する「グローバリズム批判」と、アンチ側が訴える「排外主義」の間に存在する認識の溝は、単なる言葉の応酬ではなく、根底にある思想や価値観の相違から生じています。望月衣塑子記者の指摘する「右左関係なく記者が交わることが大切」という視点は、このような複雑な政治対立において、多角的な情報収集と異なる意見への理解が不可欠であることを示唆しており、今後の議論の深化に向けた重要な指針となるでしょう。
参考文献
- 産経新聞社 (2025年7月31日). 「参政党のラスト街宣には支援者に加え多くのアンチも駆け付けた」, Yahoo!ニュース.
- 産経新聞社 (2025年7月29日). 「【写真】東京新聞の望月衣塑子記者」, iza!(イザ!).