近年、日本で多様な働き方として注目を集める「スキマバイト」は、サービス業、特にエンターテイメント業界において重要な労働力源となっています。本稿では、あるギグワーカーが映画館の清掃業務に従事した経験を通じて見えてきた、現場の具体的な労働実態と、スキマバイトが果たす役割について報告します。この経験は、単発労働のメリットと課題、そして特定の業務に求められる効率性の両面を浮き彫りにします。
映画館ギグワーカーの任務と初日の現実
ギグワーカーは以前、別のシネマコンプレックスで長時間にわたり使用済みポップコーントレーの拭き上げという単調な作業を経験し、その過酷さから「いつか本格的な映画館業務に携わりたい」という意欲を抱いていました。今回、別の系列のシネコンでの募集に応募し、新たな挑戦に臨みました。当日はギグワーカーを含む2名が清掃業務に配属され、社員からの業務説明とインカムの装着を経て、業務が開始されました。特に、大学生年代の指導係から実際の作業手順を学ぶ形式が取られ、即戦力としての導入が図られました。中心的な任務は、上映後の館内清掃業務でした。
清掃業務の詳細:ゴミ回収からトレー拭き上げまで
最初に指導されたのは、映画館内のゴミ回収カウンターでの作業です。映画終了後、退場する観客から飲食物のゴミやポップコーントレーを受け取り、飲み残しや食べ残しは専用の箱へ回収し、その後ゴミ袋に廃棄する流れが確立されていました。この作業は、観客との短い接触を伴いながらも、迅速な処理が求められる業務です。
ゴミ回収作業が一段落すると、次に移るのはポップコーントレーの拭き上げ作業です。回収されたトレーはアルコールスプレーで消毒され、布で丁寧に拭き上げられた後、専用のラックに積み上げられていきます。このギグワーカーは、以前経験したシネコンと比較して、今回の職場のポップコーントレーが小型で取り扱いが容易であり、拭き上げ作業の手間が半減したことに言及しています。これは、清掃業務における設備の設計が作業効率に大きく影響する具体例を示しています。
映画館の座席を清掃する作業員。スキマバイトにおけるサービス業の労働実態を示す一例。
結論:ギグエコノミーが支えるエンタメ業界の裏側
今回の映画館でのスキマバイト経験は、日本のサービス業、特にエンタメ業界の運営が、ギグワーカーによる柔軟な労働力によって支えられている実態を浮き彫りにしました。単調ながらも不可欠な清掃業務は、映画館の衛生環境と顧客体験を維持する上で極めて重要です。また、業務効率を考慮した備品の設計が、労働者の負担軽減と全体の生産性向上に貢献する可能性も示唆されました。ギグエコノミーは、労働者にとっては多様な経験や柔軟な働き方を、企業にとっては必要な時に必要な労働力を確保する手段として、今後もその役割を拡大していくでしょう。
参考文献
- みやーんZZ「【スキマバイト体験記】映画館のポップコーントレー拭きは孤独でキツいのか? やって分かった意外な結論」ダイヤモンド・オンライン、2024年8月3日掲載(Yahoo!ニュース配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/0aac85d8a38886e246d998c4edce1b7f7c613aa0