女優・古村比呂さん(59)は、過去13年間にわたりがんと闘い続けています。NHK BSで再放送中の朝ドラ『チョッちゃん』でヒロインを溌剌と演じた彼女は、46歳で子宮頸がんにより子宮を全摘出し、その後も再発を繰り返し、現在はがんとリンパ浮腫という合併症と共存する日々を送っています。苦難の渦中にあっても前向きさを失わない古村さんの原動力と、その壮絶な闘病の道のりに迫ります。
古村比呂さんがカメラを見つめるポートレート写真。がん闘病13年、リンパ浮腫と共存しながらも前向きな姿勢がうかがえる表情。
リンパ浮腫とは?子宮全摘術後の隠れた合併症
古村さんが46歳で広汎子宮全摘出術を受けて以来、今もなお悩まされ続けているのが「リンパ浮腫」という合併症です。婦人科系のがんの摘出手術では、がんの転移を防ぎ、また転移の有無を確認するために、鼠径部(そけいぶ)のリンパ節も一定数切除されます。このリンパ節の切除が原因でリンパ液の流れが滞り、手足にむくみが生じる症状がリンパ浮腫です。
古村さんの場合、手術から約1年後に症状が出始めました。初期は左脚がパンパンに腫れ上がり、歩行すら困難な状態に陥りました。症状は時間とともに進行し、現在では脚だけでなく、目や鼻の内側、口の内側など、左半身のあらゆる場所に腫れやむくみが出現するといいます。
身体に纏わりつく感覚:古村比呂が語るリンパ浮腫の現実
古村さんはリンパ浮腫の症状について、「左半身全体に常にラップをまとっているような感覚」と表現しています。この症状は日常生活に大きな支障をきたし、脚をきつく締める弾性ストッキングの着用が欠かせません。リンパ浮腫の症状や出現部位は人それぞれですが、一度発症すると完治は難しいとされています。さらに古村さんの場合、抗がん剤治療を受けると免疫力が低下するためか、リンパ浮腫の症状がより顕著に出やすくなるという難しさも抱えています。この継続的な苦痛は、彼女の闘病生活における大きな側面の一つです。
苦難を乗り越え、共感を求めて:情報交流会「HIRAKU」設立の背景
自身のリンパ浮腫と向き合う中で、古村さんは同じ症状に苦しむ人々とつながりたいという強い思いを抱くようになりました。彼女がリンパ浮腫を発症した頃、医師の間でも症例の認識がまだ十分でなく、関連する情報も極めて少なかったといいます。自身の症状を改善したい、そして同時に他の患者の役に立ちたいというシンプルな動機から、2015年にリンパ浮腫の情報交流会を立ち上げました。この活動は発展し、現在では「一般社団法人HIRAKU がん・リンパ浮腫と共存」の代表を務め、多くの患者にとって希望の光となっています。
38年前の若かりし頃の古村比呂さん。現在の明るい笑顔と変わらない印象を与え、長年にわたるがん闘病の強さを象徴する一枚。
13年にわたる闘病の節目:4度目の再発と変わらぬ覚悟
精力的な活動を続けていた古村さんですが、2023年1月、57歳の時に4度目のがんが発覚しました。2019年2月に抗がん剤治療を中断してから約4年が経とうとした矢先、PET検査により腹部傍大動脈リンパ節への再燃(再々再発)が見つかったのです。主治医から「完治することはない」と告げられ、過度な期待をせず現実を受け止める覚悟はできていたつもりだったと古村さんは語ります。しかし、それでも「辛くなかったかといえば嘘になります」と、度重なるがんとの闘いがもたらす精神的負担の大きさを正直に明かしています。
古村比呂さんの13年にわたるがん闘病とリンパ浮腫との共存の道のりは、身体的な苦痛と精神的な葛藤に満ちています。しかし、彼女はその経験を単なる個人的な苦難で終わらせず、同じ境遇の人々と情報を共有し、支え合うための活動へと昇華させました。完治が難しい病を抱えながらも、常に前向きな姿勢を保ち、希望を見出す彼女の姿は、多くの人々にとって勇気と共感を与え続けています。
参考文献
- 文春オンライン (2025年8月2日). 「46歳で子宮頸がんになり子宮を全摘→5年後の再発→再々発で今度は全身に…古村比呂(59)が忘れられない“1枚の写真”「明らかに膿んでいるような状態で変色も…」」. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/cc130bf19e65032f9042565578a368ea98098a17