宮崎参院選、自民大敗の裏側:江藤拓氏失言と小泉進次郎氏の備蓄米政策

主食であるコメの価格高騰が国民生活を直撃する中、「コメを買ったことがない。売るほどある」との発言で農林水産相の職を解かれた自民党の江藤拓氏。彼の地元である宮崎では、先の参院選において、自民党内で“勝って当たり前”と目されていた現職候補が野党候補に約4000票の差で敗れるという衝撃的な結果となった。この敗戦の主要因は江藤氏の失言であると広く報じられているが、実はその裏には、別の、より根深い要因が存在するとの声も上がっている。

政府備蓄米で作ったおにぎりを試食する江藤拓農林水産相。コメ価格高騰対策が焦点となる中、失言が議論を呼んだ。政府備蓄米で作ったおにぎりを試食する江藤拓農林水産相。コメ価格高騰対策が焦点となる中、失言が議論を呼んだ。

江藤氏の失言と党内の思惑

江藤氏の「コメを買ったことがない」という発言は、有権者の間に強い不信感を招いたとされている。自民党関係者によると、党内部ではこの失言が選挙に悪影響を及ぼすことを懸念し、「江藤さんが応援演説をしたら逆効果になる。マイクは握らせない」という方針が固まっていたという。実際に、彼は一部でマイクを握り謝罪する場面もあったものの、選挙結果を受けて大手メディアやテレビ各社は、江藤氏の失言が敗因であるとの見方を示した。しかし、党内からは、その失言以上に強い「逆風」を招いた真の原因があるという指摘も出ている。

小泉進次郎農水相による「備蓄米」政策の影響

自民党宮崎県連の幹部が明かすところによると、今回の参院選の結果(自民・長峯誠氏の落選)は、江藤氏の後任として農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏が主導した「5kg2000円の備蓄米」の安値放出政策の影響の方が大きいと感じているという。小泉農水相が次々と打ち出したコメ高騰対策やその言動は連日メディアに取り上げられ、党内では参院選の「追い風」になると期待する向きもあった。しかし、肝心の宮崎県では、消費者と生産者の間で異なる反応が広がっていたのだ。

農業関係者からの強い反発と苦情

「消費者にとってはありがたい話だったかもしれないが、農業関係者にとってはたまったものではない」。県連幹部はそう語る。コメの販売価格が5kgあたり5000~6000円に高騰し、「高い、高い」と言われていた時期でさえ、コメ農家は赤字続きであったという。このような状況下での備蓄米の安値放出は、生産者側が軽んじられているという印象を与え、強い反発を招いた。実際に、自民党の地元議員のもとには、小泉氏の政策に対する多くの苦情の電話が寄せられたといい、「小泉さんのやったことの影響に比べたら、江藤さんの失言なんてかわいいものだ」と漏らすほどだ。

コメどころ宮崎における支持層の動揺

宮崎県は有数のコメどころであり、農業関係者が多いことで知られている。これらの人々は、これまで自民党の強固な支持層とされてきた。しかし、今回の小泉農水相による備蓄米政策は、長年にわたり自民党を支えてきた基盤を揺るがす結果となった。「確かに小泉さんへの反発、反感は大きかった」と地元議員は認めつつも、「ただ、江藤さんが失言をしなければ小泉さんが農林水産大臣になることもなかったので、そういう意味では、結局、元凶は江藤さんかもしれない」と、皮肉を込めて指摘する。

今回の宮崎での参院選敗北は、単なる政治家の失言に起因するものではなく、政府の農業政策が地元経済、特に長年の支持層である農業関係者に与える影響の大きさを浮き彫りにした。当選回数8回と圧倒的な強さを誇ってきた江藤氏だが、次の自身の選挙では、有権者からどのような「審判」を下されるのか、その動向が注目される。

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