子どもが不登校になった場合、親は子どもの心配だけにとどまらず、さまざまな「困りごと」に直面する。毎朝の欠席連絡のストレス、勝手に決められていたPTA役員…。和光大学教授で公認心理師でもある著者は「親子の孤立を防ぐには、学校への相談や交渉が大切」と提言する。※本稿は、高坂康雅『不登校のあの子に起きていること』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。著者の名字は正しくは「はしご高」。
● 毎朝のある作業が 親にとって負担に
NPO法人「多様な学びプロジェクト」の調査で、学校とのやりとりにおける困りごととして最も多く選ばれたのが、出席連絡(欠席することの連絡:欠席連絡)でした。どこの学校でも、子どもが学校を休む場合には、理由も含めて朝のうちに連絡することになっていると思います。
欠席連絡については、かなり前は電話連絡が主流でしたが、近年では、連絡帳を通して行う学校が多くなりました。連絡帳に欠席理由を書いて、近所の友だちに学校まで届けてもらう。そして、放課後にその友だちが連絡帳をもって帰ってきて、あわせてプリントなども届けてもらう流れです。
また最近では、メールでの欠席連絡や、子ども一人一人に配布されたタブレットを通して、あるいはアプリなどを通して欠席連絡をする方法も採用されています。タブレットやアプリの登場によって学校側も子どもの出欠席をある程度リアルタイムで把握できるようになっています。
たまに風邪をひいたときに連絡するくらいであれば、欠席連絡はたいした負担には感じないでしょう。しかし、これが毎日になると、けっこう負担になるものです。連絡帳を届けてもらうように友だちに頼むのも気が引けます。
また、毎朝欠席連絡をすることで、「今日も行けなかった」と自覚せざるを得ません。不登校の子どもの親にとって、毎朝を憂うつにさせる作業が、この欠席連絡なのです。
不登校の子どもの欠席連絡として多くとられている対応は、学校に行くときだけ連絡をするという方法です。不登校の子どもは当日にならないと、行くのか行かないのか判断できないことが多いですし、場合によっては直前まで連絡できないこともあります。
事前に「明日学校に行きます」と言っておいて、当日になってやっぱりキャンセルということも少なくありません。当日の朝になって、「やっぱり学校に行けない」と思うことは子どもの負担になりますし、キャンセルの連絡をする親の負担にもなります。
そのように考えれば、学校に行くときだけ連絡をするという方法は、子どもにとっても親にとっても合理的ですし、とても助かる対応といえるでしょう。
● 不登校家庭を悩ませる 給食費や教材費の問題
NPO法人「多様な学びプロジェクト」の調査では、保護者の困りごとの5番目に「給食費/教材費/PTA会費の支払について」(35.9%)があげられていました。
お金の問題も不登校の子どもをもつ家庭にとっては悩ましいものです。
給食費を支払わなければ、基本的に給食は食べられません。かといって、みんなが給食を食べているなかでお弁当をもたせるのも実際には難しいところがあります。
もう絶対に学校には行かないという子どもであれば、給食費を支払わないという選択肢もあり得るでしょうが、世の中には「絶対」ということはありませんので、何かのきっかけで子どもが学校に行くかもしれませんし、そのような希望を親はなかなか捨てきれません。そのため、ほとんど食べることのない給食に対して、費用を払い続けるという事態が生じてきます。
教材費も同様です。学校は児童生徒数に合わせて、副教材(実験キットや問題集など)や業者テストなどを購入します。他にも、体操着や絵の具セット、習字セット、リコーダーや鍵盤ハーモニカなど、授業を受けるうえでは購入しなければならないものがけっこうあります。






