大学受験の「私立一強」は過去?公立進学校の復活と埼玉・千葉の教育トレンド

近年、日本の大学受験界ではこれまでにない地殻変動が起きています。その象徴とも言えるのが、2025年の東京大学合格者数ランキングに見られる変化です。例年、開成や聖光学院といった名だたる私立中高一貫校が上位を独占してきましたが、今年は都立日比谷高校が81名もの合格者を輩出し、トップ5に食い込みました。この公立校の躍進は東京都に限った話ではありません。神奈川県の横浜翠嵐高校も過去最高の合格実績を記録するなど、長らく続いた「私立一強」という構図は崩れつつあります。なぜ今、公立進学校は奇跡的な復活を遂げているのでしょうか。「日本一進学校に詳しいホスト」の異名を持つ歌舞伎町ホストの翠嵐氏と、学歴活動家のじゅそうけん氏がその深層を徹底的に語り合いました。

学歴活動家のじゅそうけん氏(左)と歌舞伎町ホストの翠嵐氏(右)。近年の大学受験界の地殻変動について語り合う。学歴活動家のじゅそうけん氏(左)と歌舞伎町ホストの翠嵐氏(右)。近年の大学受験界の地殻変動について語り合う。

埼玉に現れる二極化する進路:「エリート東大」と「経験値豊かな早慶」

じゅそうけん氏によると、埼玉県の進路選択には興味深い二極化が見られます。一つは、浦和高校から東京大学や医学部を目指す「ガリ勉」とも呼ばれるエリートルート。もう一つは、早稲田大学本庄高等学院や慶應義塾志木高等学校といった私立大学附属校で、のびのびと高校生活を送り、内部進学で早慶を目指す「陽キャ」ルートです。

翠嵐氏は、早稲田本庄の学生について「本当にすごい。頭もいいし、陽キャだし。もう高校というより大学のような雰囲気だ」と評価します。彼らは高校時代から髪を染めたり、自由に振る舞ったりする生徒が多く、高校という枠にとらわれない開放的な環境で過ごしていると言います。

新しい成功の形:コミュ力と経験値が重視される親の選択

じゅそうけん氏は、早大本庄の生徒たちが「浪人して大学デビューする人間とは違って、それを3年早く経験している」と指摘します。早大本庄は校則もほとんどなく、大学の単位を先取りできる制度もあるため、生徒たちは精神的に早くから自立し、大学入学時にはすでに「大学生活は遊び尽くしたけど、これから何をする?」といった、大人びた風格さえ漂わせると翠嵐氏は語ります。

親の立場から見ても、浦和高校から東大を目指すのがエリートである一方で、早めに附属校に入学させ、そこでコミュニケーション能力や海外経験を積ませるというルートも、近年非常に人気を集めています。埼玉県は本当に進路の選択肢が豊かで恵まれていると、両氏は評価します。

千葉の公立進学校に起きた「王者陥落」の衝撃:県千葉と県船の並走

次に千葉県の状況を見てみましょう。千葉県では、私立の渋谷教育学園幕張(渋幕)が長年圧倒的な存在感を放ち、公立では県立千葉高校と県立船橋高校(県船)が二大トップという構図でした。

しかし、千葉県でも公立の中高一貫化が進んでいます。県立千葉高校や東葛飾高校も附属中学校を設立し、教育環境の変化を図っています。じゅそうけん氏が指摘する衝撃的なデータとして、昨年、千葉県の東大合格者数において、長年の王者であった県立千葉高校に、県立船橋高校が肩を並べたことが挙げられます。6年一貫教育の県立千葉が、3年制の県船に追いつかれたこの事実は、関係者の間に大きな衝撃を与えました。

まとめ

今回の対談では、近年の大学受験における公立進学校の目覚ましい復活と、地域ごとの多様な進路選択の傾向が浮き彫りになりました。特に埼玉や千葉では、単に難関大学に合格するだけでなく、コミュニケーション能力や実社会での経験を重視する「新しい成功の形」が親世代にも浸透しつつあります。教育の多様化が進む中で、これからの日本の教育はどのような方向へ向かうのか、その動向から目が離せません。

参考資料:
みんかぶマガジンTV