「北の国から」再放送、なぜ「ハッピーアワー」?国民的ドラマの再評価とフジテレビの戦略

フジテレビは8月11日から、国民的ドラマ「北の国から」全24話の再放送を開始します。北海道富良野を舞台に、黒板五郎(田中邦衛)と子供たち純(吉岡秀隆)、蛍(中嶋朋子)の成長を描いた倉本聰氏原作・脚本の大ヒット作の再登場は多くのファンを喜ばせる一方で、平日午後の関東ローカル再放送枠「ハッピーアワー」での放送には、業界内外から様々な声が上がっています。

国民的ドラマ「北の国から」の軌跡とフジテレビの象徴

「北の国から」は1981年10月9日に放送が開始され、翌1982年3月26日に最終回を迎えました。放送終了日には、子供の文字で書かれた《富良野ろくごう、廃屋、さよなら/吹雪、キタキツネ、あしあと、さよなら/灯は小さくてもあったかかったよ。/「北の国から」今夜でお別れです。一〇九三五通のお手紙ありがとうございました。/純 蛍》という新聞広告が掲載され、ファンの心を深く捉えました。民放プロデューサーによると、当初視聴率は1桁台に低迷したものの、後半には盛り返し、最終回は21.0%を記録(ビデオリサーチ調べ、関東地区、世帯)。その後、全8編のスペシャルドラマも制作され、2002年の最終話「遺言 前編」では38.4%という驚異的な数字を叩き出しています。

「北の国から」は単なる人気ドラマに留まらず、フジテレビにとって象徴的な意味合いを持つ作品でした。番組がスタートした1981年は、フジテレビが「楽しくなければテレビじゃない」というスローガンを掲げた年であり、「オレたちひょうきん族」などのバラエティ番組が誕生。翌1982年には「笑っていいとも!」も始まり、開局以来初の年間視聴率三冠王を獲得しました。このフジテレビの黄金期を牽引したドラマ部門の代表作こそが「北の国から」だったと言えるでしょう。

「北の国から」の象徴的なロゴと北海道の風景。国民的ドラマの再放送決定を伝える。「北の国から」の象徴的なロゴと北海道の風景。国民的ドラマの再放送決定を伝える。

視聴率1%台「ハッピーアワー」枠の現状と課題

「北の国から」の新聞広告には、かつてのフジテレビのスローガン「楽しくなければテレビじゃない」が明記されていました。しかし、今年フジテレビは中居正広氏による性暴力問題への対応で徹底的な猛省を強いられ、このスローガンを撤回しています。その直後に「北の国から」の再放送が決まったことに対し、皮肉な見方をする声も少なくありません。

特に注目されるのは、その放送枠が「ハッピーアワー」である点です。デイリー新潮が6月24日配信の記事で報じたように、平日午後の再放送枠「ハッピーアワー」(第1部13:50〜14:48、第2部14:48〜15:45)は、これまで「古畑任三郎」や「医龍―Team Medical Dragon―」といった人気作を再放送してきたにもかかわらず、視聴率1%台が珍しくなく、テレビ東京の「午後のロードショー」にも苦戦を強いられています。現在放送中の三浦春馬さん主演「僕のいた時間」が2%台と多少持ち直しているものの、果たして40年以上前の作品である「北の国から」がこの厳しい状況を打開できるのか、その成否が注目されています。

フジテレビは8月4日から「〈ハッピーアワー〉夏・特別企画」と題し、第1弾・第2弾で「古畑任三郎ファイナル」(イチローや松嶋菜々子が出演)、第3弾で「はだしのゲン」、第4弾で「ゾウのはな子」を放送した後、第5弾として「北の国から」を投入します。過去の「ハッピーアワー」での「古畑」シリーズの視聴率を考えると、今回の「北の国から」がどのような数字を出すのか、テレビ業界の関心を集めています。

まとめ

「北の国から」の再放送は、日本のテレビ史に名を刻む名作の再評価の機会であると同時に、フジテレビの現在の視聴率課題、特に「ハッピーアワー」枠の苦戦という背景を浮き彫りにしています。国民的ドラマが、低迷する再放送枠でどのような影響を与えるのか、その結果は今後のフジテレビの番組編成や戦略に影響を与える可能性を秘めています。


参考文献: