最近、頭がぼんやりする、集中力が続かない、理由もなく気分が落ち込むといった不調を感じていませんか？ 多くの方はこれを「脳の問題」と考えがちですが、実はその原因が「腸の疲れ」、すなわち腸疲労にある可能性が、近年の研究で指摘されています。
脳の不調、実は「腸」が悲鳴を上げている
多忙な日々や不規則な食生活は、知らず知らずのうちに私たちの腸に負担をかけています。分子整合栄養医学の専門家であり、『更年期の不調の原因は栄養不足が9割』の著者でもある梶尚志医師は、現代人の抱える多くの不調の根源に「腸疲労」があると警鐘を鳴らしています。
腸は単なる消化器官ではない「司令塔」
腸の役割は、単に食べたものを消化・吸収するだけではありません。免疫機能、神経系への影響、ホルモン産生、栄養素の代謝、さらには私たちの感情（メンタル）に至るまで、生命活動の多くの側面を支える重要な「司令塔」としての役割を担っています。このため、腸が疲弊すれば脳も疲労し、腸に炎症が起きれば脳も炎症反応を示すなど、両者は密接に連携しているのです。
脳疲労をリセットするためには、まず腸を整える必要があると専門家は説く。腸を休ませるのに役立つ食材とは何か。
現代の「脳疲労」は「腸脳相関」が原因
梶医師は、現代に蔓延する「脳の疲労」は、脳単独の問題ではなく、腸脳相関（腸疲労＝脳疲労）が根底にあると説明します。脳のコンディションは、セロトニン、オキシトシンといった「幸せホルモン」や、ドーパミンのような「やる気のホルモン」、そしてリラックス効果をもたらすGABAなどの神経伝達物質のバランスによって決まります。驚くべきことに、これらの物質の多くは腸内で生成されているのです。
幸せホルモンもやる気も腸から生まれる
例えば、セロトニンやオキシトシンの約90%は腸内で生成され、ドーパミンの約50%も腸に由来します。さらに、GABAの産生には腸内細菌が深く関与しています。この事実が示すように、腸が健康で整っていれば、脳も自然と良い状態を保ち、集中力やメンタルも安定します。反対に、腸のバランスが乱れれば、脳の機能や心理状態にも悪影響が及ぶのです。
このように、現代人が抱える「脳疲労」やメンタルの不調の多くは、実は脳単体の問題ではなく、腸の健康状態と密接に関わっていることが明らかになっています。腸を整えることは、脳をリセットし、心身の活力を取り戻すための最短ルートと言えるでしょう。自身の腸内環境を見つめ直し、健康な毎日を送るための第一歩を踏み出すことが重要です。
