シングルファザーと5歳長女の無理心中:届かなかったSOSと見えざる苦悩

2024年7月、奈良県下北山村のダム湖で、52歳の父親と5歳の長女が命を絶つ無理心中事件が発生しました。一人で娘を育てる「シングルファザー」であった父親は、事件直前に精神的な苦痛を訴え、児童相談所や高齢の両親に助けを求めていました。なぜ、このような悲劇が起きてしまったのか。本稿では、事件の経緯と、父親を追い詰めた見えざる「苦悩」に迫ります。
ニュース番組のロゴと映像。奈良県下北山村で発生したシングルファザーと長女の無理心中事件の報道を伝えるイメージ。ニュース番組のロゴと映像。奈良県下北山村で発生したシングルファザーと長女の無理心中事件の報道を伝えるイメージ。

社交的で責任感ある父の悲劇:奈良・下北山村の事件現場

奈良県下北山村のダム湖にかかる橋の下で、2024年7月、52歳の父親と5歳の長女が遺体で発見される痛ましい事件が起きました。警察は、父親が長女を抱え橋から飛び降り、無理心中を図ったものとみて、長女殺害の疑いで容疑者死亡のまま書類送検しています。

父親は娘が生まれて間もなく離婚し、大阪市内の市営住宅でシングルファザーとして子育てしていました。近隣住民からは「気さくで物腰が柔らかく、責任感もある良い方」「すごく仲の良い親子だった」との声が聞かれ、子育てに悩む様子は見られなかったといいます。この認識と事件の落差は、社会が気づきにくい一人親の「育児ストレス」や「精神的負担」の深さを示唆します。
奈良県下北山村のダム湖にかかる橋の風景。2024年7月に52歳の父親と5歳の長女の無理心中事件が発生した現場。奈良県下北山村のダム湖にかかる橋の風景。2024年7月に52歳の父親と5歳の長女の無理心中事件が発生した現場。

最後の11時間:児童相談所へのSOSと途絶えた連絡

事件の約11時間前、父親は児童相談所や高齢の両親に助けを求めていました。午後1時頃、大阪市の「児童虐待ホットライン」に電話をかけ、「精神的にしんどい、子供を預かってほしい」と訴え、自殺や心中をほのめかしました。

児童相談所の職員は午後2時頃に父親へ電話をかけ、相談に応じました。当初は子どもの一時保護も視野に入れ話を進めたものの、会話途中で父親の態度は突然変化。「もういい」と言って一方的に電話を切りました。児童相談所はその後も連絡を試みましたが、父親は「レンタカーで移動中」などと話し、来所要請に応じず、午後3時過ぎには電話がつながらなくなりました。この数時間の動きは、父親の抱えていた「社会的孤立」と「心中の意思」の強さ、そして支援が届かなかった現実を浮き彫りにします。
大阪市内の市営住宅の外観。シングルファザーと長女が生活していた住まい。大阪市内の市営住宅の外観。シングルファザーと長女が生活していた住まい。

まとめ

奈良県下北山村の無理心中事件は、シングルファザーが直面する育児ストレス、精神的負担、そして孤立の深刻さを浮き彫りにしました。助けを求めながらも悲劇に至ったこの事案は、見えづらい親の苦悩や、必要な支援が届かない現実を示唆。社会全体で、育児に悩む親が孤立せず、安心して助けを求められるサポート体制の強化が求められます。

情報源

Yahoo!ニュース: 読売テレビニュース