松木武彦遺作『古墳時代の歴史』と宮内庁新方針:深まる関心

11月4日に発表されたトーハンの週間ベストセラーで、新書部門の注目作として国立歴史民俗博物館教授・松木武彦氏の遺作『古墳時代の歴史』(講談社)が9位に初登場しました。同時期に宮内庁が陵墓管理に関する新方針を決定したことも報じられ、学術研究と文化財保護の現場双方で、日本の古墳時代に対する関心がかつてないほど高まっています。

考古学と文献史学が織りなす『古墳時代の歴史』

松木武彦氏の『古墳時代の歴史』は、これまで断片的に語られてきた古墳時代の歴史を、考古学的資料を中心に年代順、すなわち編年体で体系的に描いた意欲作です。近年、放射性炭素年代法や年輪年代法といった科学的年代測定法の発展により、古墳や集落の出現・変化をより正確な時系列で把握できるようになりました。本書はこれらの最新データを基礎とし、中国史書や『日本書紀』などの信頼できる文献史料を用いることで、個別の考古資料に歴史的な文脈と連続性を与えようと試みています。昨年急逝された松木氏の遺作にして集大成であり、多角的な視点から古代日本史の深層に迫る一冊として、歴史愛好家や研究者の間で大きな注目を集めています。

講談社から出版された松木武彦氏の遺作『古墳時代の歴史』の表紙。日本の古墳時代研究の集大成を示す。講談社から出版された松木武彦氏の遺作『古墳時代の歴史』の表紙。日本の古墳時代研究の集大成を示す。

宮内庁が打ち出す陵墓管理の新方針:文化財保護の現場から

一方、11月6日には毎日新聞が、宮内庁が天皇や皇族の墓である陵墓の管理に関する新方針を決めたと報じました。台風などによる倒木被害が相次ぐ現状を受け、宮内庁は優先度の高い陵墓から樹木の処理計画を策定し、実態調査と伐採を進める方針です。特に注目すべきは、2026年度に卑弥呼の墓との説がある奈良県桜井市の箸墓古墳など、初期ヤマト王権の大王墓とされる4基の前方後円墳が調査対象となる点です。翌年度からの伐採作業着手も予定されており、これは古墳時代の重要文化財保護に向けた具体的な一歩として評価されます。学術的な探求が進む中で、陵墓という具体的な文化財の保存・管理にも新たな動きが見られ、古墳時代への関心が学術と実務の両面で深化していることが伺えます。

週間ベストセラーの新書第1位は、ジェーン・スー氏の『介護未満の父に起きたこと』(新潮社)が獲得しました。82歳の父が突然一人暮らしとなり、幸い健康であるものの家事がほとんどできない状況から、娘がビジネスライクにサポートする5年間を描いています。日々の体力や記憶力の衰えに直面し、「老人以上、介護未満」の時期に必要な心構えや現実を綴った作品として、多くの読者の共感を呼んでいます。

新潮社から刊行されたジェーン・スー氏の著書『介護未満の父に起きたこと』の表紙。現代社会の介護問題の一端を切り取る。新潮社から刊行されたジェーン・スー氏の著書『介護未満の父に起きたこと』の表紙。現代社会の介護問題の一端を切り取る。

結び

松木武彦氏の遺作出版と宮内庁の陵墓管理新方針の発表は、日本の古代史、特に古墳時代に対する社会全体の関心が新たな段階に入ったことを示唆しています。最新の科学技術を取り入れた学術研究の深化と、文化財としての陵墓を未来へ継承するための実務的な取り組みが同時に進展しており、古墳時代という壮大な歴史への理解と保護が、今後さらに促進されることが期待されます。

参考資料

  • トーハン週間ベストセラー発表
  • 毎日新聞(宮内庁陵墓管理に関する報道)
  • 講談社ウェブサイト(『古墳時代の歴史』情報)
  • 新潮社ウェブサイト(『介護未満の父に起きたこと』情報)