2025年のお盆期間(航空各社定義:8月8日〜8月17日)が本格的に始まった中、航空各社は最新の予約状況を発表しました。特に全日本空輸(ANA)は8月9日までに情報を更新し、日本航空(JAL)やスカイマークを含む主要3社の動向をBusiness Insider Japanが取材したところ、国内線の予約状況において各社の明暗がはっきりと分かれる結果となりました。具体的には、ANAが前年比で予約数を伸ばした一方で、JALとスカイマークは前年を下回る形となっています。この差の背景には、各社の異なる戦略が見え隠れしています。
国内線予約状況の全体像:ANAが前年比増、JALとスカイマークは苦戦
お盆期間中の国内線予約において、大手航空会社間で対照的な結果が顕在化しました。ANAは提供座席数が前年比98%の175万3777席に対し、予約数は149万7395人(前年比102.5%)を記録し、予約率は85.4%(前年比3.8ポイント増)と好調を維持しています。ピーク日は下りが8月9日、上りが8月14日と見込まれています。方面別では、新テーマパーク「ジャングリア」開業で注目される沖縄方面が予約率91.1%、ベストシーズンの北海道方面が90.4%と高い水準を記録。さらに、大阪・関西万博開催中の関西方面は予約数が前年比109%と大きく伸びています。
2025年お盆期間の航空便予約状況を発表したJALとANAの機体
一方、JAL国内線は提供座席数が前年比99%の134万2874席に対し、予約数は104万2929人(前年比98.5%)に留まり、予約率は77.7%(前年比0.4ポイント減)と前年割れとなりました。JALのピークは下りが8月9日、上りが8月16日〜17日です。方面別では九州方面が前年比102.1%と堅調な動きを見せています。スカイマークも国内線の予約数が前年を下回っており、大手2社とは異なる結果に。
戦略の明暗:ANAのセール戦略とJALの単価維持戦略
ANAが提供座席数ほぼ横ばいにもかかわらず予約数を前年超えにした背景には、明確な戦略がありました。ANA広報によると、「ゴールデンウィークやお盆期間は中間日の利用が大幅に下がる傾向にある」ため、「予約率を平準化するため、早いタイミングでセールを行い、閑散期の利用を埋めた効果が出た」と説明しています。計画的なセール戦略が、全体的な予約率の向上に寄与した形です。
対照的にJALは、ANAに対して予約数で約45万人、予約率で7.7ポイントのビハインドがある結果となりました。JAL広報は、この背景について「セールなどは行わず、航空券単価を下げなかったことが影響している可能性がある」と回答しています。ANAが積極的に価格戦略を展開して需要を喚起したのに対し、JALは単価維持を優先した結果、予約数ではANAに水をあけられる形となりました。
お盆期間の航空市場動向と今後の展望
今回の各社の予約状況からは、コロナ禍が落ち着き、人々の移動意欲が高まる中で、航空各社がそれぞれ異なる戦略を模索している現状が浮き彫りになりました。ANAのように需要の平準化と早期予約を促す価格戦略が奏功する一方で、JALのように単価を維持し、収益性を重視する戦略も存在します。沖縄の「ジャングリア」や大阪の「関西万博」といった新たな観光コンテンツが特定の方面への需要を押し上げる要因となることも示されました。
航空業界にとってお盆期間は年間でも重要な需要期の一つであり、各社の戦略が今後の航空市場のトレンドを形成する可能性を秘めています。消費者の行動変容や市場の動向を読み解き、いかに効果的な戦略を打ち出すかが、今後の航空会社の競争力を左右するでしょう。