現代の日本社会において、家族の形態や個人の働き方は大きく変化しています。特に、子育て中の女性の就労状況は顕著な変化を見せており、厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」(2025年7月4日公表)によれば、18歳未満の子どもを持つ母親のうち「仕事がある母」の割合が約8割に達しています。この数字は2004年の56.7%から大幅に増加しており、共働き世帯が社会の主流となっている現状を明確に示しています。かつて専業主婦世帯が多数を占めていた時代とは一線を画し、現代では女性の多様な生き方や働き方が模索されています。しかし、その一方で仕事と家事・育児の両立に奮闘し、疲弊している人々も少なくありません。本稿では、最新のデータに基づき、日本における共働き世帯の現状と、変化する女性の働き方、そして50歳時点での結婚状況について考察します。
現代の日本における働く母親の現状
厚生労働省の調査が示すように、18歳未満の子どもを持つ母親の就業率は過去20年間で劇的に上昇しました。これは、経済的な理由だけでなく、女性の社会進出意識の高まりや、多様なキャリアパスを求める声の増加が背景にあると考えられます。フルタイムでのキャリア形成を目指す人、パートタイムで柔軟に働くことを選ぶ人、さらにはフリーランスや起業という道を選ぶ人まで、その選択肢は多岐にわたります。
自宅でパソコンに向かう女性:多様な働き方と共働き世帯の増加を示すイメージ
しかし、博報堂生活総合研究所の「生活定点」調査(1998〜2024年)によると、「今後してみたいことは何ですか」という質問に対し、「専業主婦になりたい」と回答する女性が約2〜3割と、一定の水準で推移していることも注目に値します。これは、社会全体の流れとして共働きが主流となりつつある中でも、個人の価値観や理想のライフスタイルは多様であり、専業主婦という選択肢を望む声も根強く存在することを示しています。多様な選択肢が広がる一方で、多くの育児中の女性が仕事と家事、育児の板挟みとなり、心身ともに疲労を感じている現実もまた存在します。
50歳時点での結婚状況:多様化するライフプラン
働き方の変化だけでなく、人々の結婚観やライフプランも多様化しています。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2024年)」を参照すると、2020年時点の50歳時の結婚状況は以下の通りです。
- 50歳時の既婚・未婚の割合(2020年)
- 有配偶: 男性64.75%・女性70.07%
- 未婚: 男性28.25%・女性17.81%
- 死別: 男性0.50%・女性1.49%
- 離別: 男性6.50%・女性10.64%
このデータからは、依然として50歳時点で配偶者がいる人が多数派であることが分かります。しかし、過去の推移と比較すると、現代における未婚の選択が増加している傾向が見て取れます。例えば、男性は1950〜1980年まで9割以上、女性は1980〜2005年まで8割以上が既婚であったことを考慮すると、現代では「結婚しない」という選択肢を選ぶ人が増えていることが明らかです。これは、個人の価値観の多様化、経済的な自立、あるいはキャリア形成を優先する生き方など、様々な要因が絡み合っている結果と言えるでしょう。結婚という形式にとらわれず、自分らしい生き方を追求する人々が増えていることが、これらの統計から読み取れます。
まとめ
日本の社会は、共働き世帯の増加、女性の多様な働き方の選択肢の拡大、そして結婚観の多様化という大きな変革期にあります。子育て中の母親の就業率が8割を超える一方で、専業主婦を希望する一定層が存在し、また50歳時点での未婚率も過去に比べて上昇しています。これらの変化は、個人の自由な選択を尊重する社会へと移行していることを示唆すると同時に、仕事と家庭の両立支援、多様な働き方への対応、そして未婚者の孤立防止といった、新たな社会課題への対応が求められていることを浮き彫りにしています。今後も、国民一人ひとりが自分らしく生きられるよう、社会全体で多様なライフスタイルと働き方を支える仕組みづくりが重要となるでしょう。
参考文献
- 厚生労働省: 「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 国立社会保障・人口問題研究所: 「人口統計資料集(2024年)」
- 博報堂生活総合研究所: 「生活定点」調査