参政党・神谷代表のドイツ極右政党会談にみる「日本人ファースト」政策の国際比較

参議院選挙での躍進が記憶に新しい参政党は、国会議員18人を擁する注目の政党となりました。「日本人ファースト」を掲げ、国民の支持を集める一方で、排外感情を煽るとの批判も一部で聞かれます。ジャーナリストの柴田優呼氏は、参政党の神谷宗幣代表がドイツの極右政党代表と会談したことを取り上げ、移民大国ドイツと日本の根本的な社会事情の違いを指摘しています。この動きは、「日本人ファースト」という言葉の背後にある、より深刻な日本社会の問題を浮き彫りにするかもしれません。

参政党の台頭と国際的な動き

参議院選挙で国民民主党に次ぐ野党第2位の比例票を獲得し、その存在感を大きく増した参政党。同党の「日本人ファースト」というスローガンは多くの支持者の心をつかみました。神谷宗幣代表は、このキャッチコピーが「選挙のため」と語り、トーンダウンする姿勢を見せていましたが、参議院予算委員会で初の質問に立った2025年8月5日、ある会談が注目を集めました。それは、移民排斥を訴えるドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のティノ・クルパラ共同党首との会談です。クルパラ氏からの「移民が増えすぎた町を見てほしい」という誘いに対し、神谷代表は同年9月にドイツをはじめとするヨーロッパ訪問を検討していることを明らかにしました。

移民大国ドイツの現状と日本の相違

神谷代表のドイツ訪問検討の動きは、移民問題に対する参政党の関心を示すものですが、移民大国であるドイツと日本の状況には大きな違いがあることに注意が必要です。国際移住機関(IOM)が2024年版世界移住報告書で発表したデータによると、ドイツはアメリカに次ぐ世界第2位の国際移住先であり、人口に占める国際移住者の割合は19%に達します。さらに、ドイツ連邦統計局の2022年時点の統計では、既にドイツ住民の24.3%が移民の背景を持っているとされています。

ドイツは歴史的に多くの移民を受け入れてきました。1950年代には地中海沿岸諸国から大量の外国人労働者を迎え入れ、冷戦後には旧東側諸国からの流入、2015年の難民危機では中東・アフリカからの難民、そして2022年にはウクライナからの避難民と、多様な背景を持つ人々を受け入れてきた経緯があります。

参院予算委員会で質問する参政党の神谷宗幣代表。ドイツの極右政党代表との会談を巡る動きに注目が集まる。参院予算委員会で質問する参政党の神谷宗幣代表。ドイツの極右政党代表との会談を巡る動きに注目が集まる。

一方、日本は国際的に難民受け入れに消極的であることで知られています。出入国在留管理庁の2024年末の統計によれば、在留外国人は約377万人で、これは人口のわずか約3%に過ぎません。このように、移民の規模、構成の複雑さ、歴史的背景、地理的位置といった面で、ドイツと日本は大きく異なり、単純な比較は困難です。また、ドイツには旧東独と旧西独間の乖離がいまだに存在し、日本のような平準的な国柄ではありません。AfDのクルパラ党首も、右翼化が進み移民に厳しい傾向がある旧東独地域の出身です。

東京都調布市で行われた参政党さや候補の演説に集まる支持者たち。「日本人ファースト」を掲げる同党への関心を示す光景。東京都調布市で行われた参政党さや候補の演説に集まる支持者たち。「日本人ファースト」を掲げる同党への関心を示す光景。

安易な排外主義への警鐘

神谷代表とAfD党首との会談、そしてドイツ訪問の検討は、参政党の今後の政策形成に影響を与える可能性があります。しかし、ドイツと日本の移民・社会状況の根本的な違いを十分に認識することが不可欠です。日本が安易にドイツのような状況に近づいていると錯覚することなく、排外主義や国内分断の火種を作り出さないよう、慎重な検討が求められます。

「日本人ファースト」という言葉の響きが、日本社会に潜在する問題意識とどのように結びついているのか、そしてそれが国際的な視点からどのように捉えられるのか、今後もその動向を注視していく必要があるでしょう。

参考文献

  • 柴田優呼. 参政党「日本人ファースト」が響いた背景にドイツとの”絶対的格差”がある. PRESIDENT Online, 2025年8月12日. (参照元記事)
  • 国際移住機関(IOM). 世界移住報告書2024年版.
  • ドイツ連邦統計局. (参照データに言及)
  • 出入国在留管理庁. (参照データに言及)