「私は決して犯人ではない」vs.「なにが無罪や、ええかげんにせえよ」 大荒れとなった王将社長射殺事件初公判


【写真】射殺された大東隆行さん

 田中被告は暴力団同士の抗争だけではなく、一般市民への度重なる襲撃などで特定危険指定暴力団に指定されている工藤会系の組幹部ということもあり、傍聴席と法廷の間には透明のアクリルの壁が設置され、被害者参加制度で法廷に入った大東さんの親族の席は、衝立(ついたて)で遮断されるなど、ものものしい雰囲気で公判が始まった。

 検察側が、起訴状を朗読した後、罪状認否に立った田中被告は証言台の前に進み出ると、

「私は決して犯人ではありません。『決して』がつきます」

 と大きな声で述べ、さらに、

「はばかることなく申し上げますが、任侠道を志すものにとって、濡れ衣の一つや二つ甘んじて受け入れます。だからと言ってセンセーショナルな事件までは、到底承服することができません。本事件は陥穽に陥ったものであり、私の不明を恥じいるばかりです。もう一度申します。 私は決して犯人ではありません」

 と演説をぶった。王将事件での逮捕は捜査機関の都合ででっちあげられた冤罪だというのだ。

■「大切なお父さん、殺したんや」

 田中被告の弁護士が、「同意見です。田中さんは無罪」と言うと、床に何かが落ちたような大きな音が法廷に響いた。そして衝立で見えなくなっている大東さんの親族席とみられるあたりから、女性の声が響き渡った。

「なにが無罪や、おい」

 怒りに満ちた大声に、裁判長が慌てて、

「ちょっと落ち着いてくださいよ」

 と不規則発言を制止したが、女性は止まらない。

「なにふざけんてるんや。ええ加減にせえよ。工藤会がなんやねん。一般人に手を出すいうんか。うちの大切なお父さん、殺したんや」

 女性は次第に涙声になりながら、叫び続けた。

 傍聴席からも加勢するように、

「被告人が殺しとる」

 と声が飛んだ。

 予期せぬ事態に騒然とする法廷。裁判長はやむなく、親族の女性に、

「出ていっていただきますよ」

 と退廷を命じようとするが、

「なんや」

 と女性はさらに食ってかからんばかりとなった。「日本一危険」ともされる特定危険指定暴力団の工藤会系組幹部の裁判とはいえ大波乱、異例の展開だ。



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