スイスで資産家がスピード違反により最大9万スイスフラン(約1638万円)の罰金を科されることになったと、AP通信が13日(現地時間)に報じました。この巨額の罰金は、スイスの交通違反罰金制度が違反者の所得や財産、生活水準に基づいて算定されるという、その独特の仕組みを浮き彫りにしています。
スイスの所得連動型罰金制度とその背景
報道によると、この資産家は1年前、スイスのヴォー州ローザンヌ市内で時速50キロ制限区間を時速77キロで走行し、警察に摘発されました。ヴォー州裁判所は今年6月、彼に1万スイスフラン(約182万円)の前納罰金を命じ、今後3年以内に同様の違反があった場合には、さらに8万スイスフラン(約1456万円)を賦課する可能性があるとの判決を下しました。このようにスピード違反の罰金が高額になるのは、スイスが違反者の所得・財産・生活水準を基準に罰金額を算定するためです。これは、罰金が単なるペナルティではなく、違反者が「痛み」を感じ、再犯を抑制する効果を持たせるための公平性を重視した考え方に基づいています。
スイスの高速道路脇に設置された、スピード違反による運転免許取消件数を示す警察の表示板と通過する車。スイスの厳格な交通法規と罰金制度を象徴。
違反者の詳細と過去の事例
今回の運転者は、スイス経済紙ビランが選定する「スイスの富裕層300人」に名を連ねたこともあるフランス国籍の資産家で、数千億ウォン台(数億スイスフラン相当)の財産を保有していることが明らかになっています。彼は裁判所の決定に異議を唱えませんでした。また、この運転者は8年前にも同様のスピード違反で、1万スイスフランを先に支払い、2年以内に再違反した場合に6万スイスフラン(約1092万円)を追加納付する条件を受けていたと現地メディアは報じています。スイスでこれまでで最も高額なスピード違反罰金の事例は2010年に発生しており、当時の資産家がフェラーリを運転中にザンクト・ガレン州でスピード違反を犯し、29万ドル(当時のレートで約3200万円)にも及ぶ罰金を科されました。
国際的な制度比較
財産や所得を基準にスピード違反の罰金を科す方式は、スイスだけでなく、ドイツやフランス、オーストリア、そして北欧諸国でも実施されています。これらの国々では、違反の種類だけでなく、違反者の経済状況に応じて罰金額が変動することで、より公平な罰則適用を目指しています。一方で、韓国などの多くの国では、所得に関係なく違反行為に対して固定額の罰金や反則金が賦課される方式が一般的です。この違いは、各国が交通法規の遵守を促す上で、どのような「公平性」や「抑止力」を重視するかという国家の価値観を反映していると言えるでしょう。
結論
スイスの所得連動型スピード違反罰金制度は、富裕層に巨額の罰金を科すことで、社会的公平性を追求し、誰もが法の下で平等であるべきという強いメッセージを発しています。この厳格な制度は、交通安全の確保だけでなく、経済的背景に関わらず全ての市民に交通法規の遵守を徹底させるための強力な抑止力として機能していると言えるでしょう。
参考文献
- AP通信
- 現地スイスメディア
- Yahoo!ニュース (記事元)