石破内閣支持率上昇:総裁選の行方と世論の動向

2025年8月12日夜に発表されたNHK世論調査は、石破内閣の支持率が前月比で7ポイント上昇し、49%が「石破続投」に賛成していることを明らかにしました。この結果は、前倒しが議論されていた自民党総裁選の行方を不透明にし、今後の政局に大きな影響を与えるものと見られています。国民の関心と、7月の参院選敗北以降続く党内の権力闘争が複雑に絡み合い、注目が集まっています。

支持率上昇中の石破茂首相、自民党総裁選の行方に注目が集まる支持率上昇中の石破茂首相、自民党総裁選の行方に注目が集まる

NHK世論調査で明確になった「石破続投」への高い支持

7月20日の参議院選挙で与党が大敗して以来、「選挙3連敗の責任を取り退陣すべき」という自民党内の権力闘争の論理と、「誰の責任で、何が問題で敗北したのか」を問う有権者の声が対立を続けてきました。2025年8月9日から11日に実施されたNHK世論調査では、石破内閣の支持率が前月比7ポイント増の38%に上昇、不支持は8ポイント減の45%となりました。特に注目すべきは、石破茂首相が「政治空白を作ってはならない」として続投の意向を示していることに対し、回答者全体の49%が「賛成」し、40%が「反対」だった点です。自民党支持層に限ると、「賛成」は69%と圧倒的な支持を集め、「反対」は23%にとどまりました。政党支持率でも、自民党が5.4ポイント増の29.4%を記録しています。NHKは、参議院選の敗因が石破首相だけの責任ではなく、政治とカネの問題なども影響しているという世論の表れだと分析しています。

原爆式典スピーチが内閣支持率上昇に影響か

私見ではありますが、8月6日の広島、そして9日の長崎で行われた原爆記念日の石破首相のあいさつが、国民からの高い評価を得て、支持率上昇に大きく寄与した可能性が高いと見ています。特に広島でのスピーチは、SNS上で「過去3人の首相のコピペ原稿とは違う」「内容や言葉選びが非常に良かった」「心に響いた」といった好意的なコメントが相次ぎました。毎日新聞の報道も、過去の首相のあいさつが「コピペ」傾向にあったことを指摘しています。
石破首相の言葉選びが「心に響いた」とされるのは、「2年前の9月、広島平和記念資料館を、改装後初めて訪問しました」「黒焦げになった無辜(むこ)の人々。4000度の熱線により一瞬にして影となった石(中略)夢や未来が瞬時に容赦なく奪われたことに言葉を失いました」といった、具体的な情景描写と感情を伴う表現です。また、歌人・正田篠枝さんの短歌「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」を引用した一節も強い印象を与えました。長崎でのあいさつでは、長崎医科大学で被爆された故・永井隆博士の言葉、「ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ」が深く国民の胸に刻まれたとされます。これらのスピーチが有権者の共感を呼び、結果として内閣支持率を押し上げた要因の一つであることは十分に考えられます。

総裁選の行方と今後の政局

石破内閣の支持率上昇は、7月の参院選敗北以降の政局に新たな局面をもたらしました。特に、原爆式典での首相の「心に響く」スピーチが世論に与えた影響は大きく、この支持率の回復は、前倒しが議論されていた自民党総裁選の実現可能性に不確実性をもたらしています。今後、8月15日の敗戦記念日のあいさつや週末に発表される各新聞社の世論調査の結果が、政局の行方をさらに左右するでしょう。国民の支持と党内の思惑が交錯する中、石破政権の動向、そして自民党総裁選の最終的な判断に引き続き注目が集まります。

参考文献