共働きが一般的となった現代において、「世帯年収」が1000万円を超える家庭は珍しくなくなりました。しかし、個人の努力やキャリアアップの目標として語られる「個人年収」が1000万円を超える人々は、実際にどの程度の割合を占めているのでしょうか。国の統計データに基づき、日本の給与所得者の実態と、高所得層の現状を詳しく見ていきましょう。
日本の平均給与の現状:国税庁データから読み解く
国税庁が発表した「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、2023年に一年間を通じて勤務した給与所得者の平均給与は460万円でした。この平均額は、給料、手当、そして賞与の合計です。詳細を見ると、男女間での差が顕著です。男性の平均給与は569万円であるのに対し、女性は316万円にとどまっています。
雇用形態による平均給与の開きも明らかです。正社員(正職員)の平均給与は530万円で、これは正社員(正職員)以外の202万円と比べると大幅に高くなっています。
さらに、事業所の規模別に分析すると、企業規模が大きいほど平均給与が高くなる傾向が見られます。例えば、従業員10人未満の事業所の平均給与は382万円ですが、5000人以上の事業所では521万円と高水準です(1000人~4999人の事業所は527万円と若干上回りますが、概ねこの傾向は変わりません)。
年齢層別のデータでは、男性の場合、年齢が高くなるにつれて平均給与も上昇し、55~59歳の年齢層で712万円と最も高くなります。一方、女性においては、年齢による給与の顕著な差は確認されていません。これらのデータは、日本の労働市場における多様な給与構造を示しています。
個人年収1000万円超えの割合:一握りの高所得層
給与所得者の年収構成比を見ると、最も多いのは300万円超400万円以下の層で16.3%、次いで400万円超500万円以下の層が15.4%を占めています。
男女別に見ると、男性では400万円超500万円以下の層が17.5%で最も多く、次いで300万円超400万円以下の層が14.9%です。一方、女性では100万円超200万円以下の層が20.5%と最も多く、次いで200万円超300万円以下の層が19.6%となっています。このデータからも、男女間の給与分布に大きな差があることがわかります。
肝心の「個人年収1000万円」を超える人々についてですが、その割合はごくわずかです。2020年や2021年にはコロナ禍の影響で一時的に割合が減少したものの、その後は物価高や企業による優秀人材の確保の動きなどを受けて微増傾向にあります。しかし、給与所得者全体から見ると、約100人のうち5~6人程度、つまりわずか数パーセントに過ぎません。この統計は、個人で1000万円を超える年収を達成することが、いかに一握りの存在であるかを示しています。
日本の給与所得者が個人年収1000万円を達成する難しさを示すイメージ
まとめ
本記事では、国税庁の統計データを基に、日本の給与所得者の平均年収やその分布、そして特に「個人年収1000万円」を超える人々の割合について解説しました。「世帯年収1000万円」が比較的見られるようになった現代においても、「個人年収」で1000万円を達成することは非常に稀であり、限られた高所得層であることが明らかになりました。これらの客観的なデータは、日本の労働環境と所得格差を理解する上で重要な情報源となります。
参考資料
- 国税庁: 「令和5年分 民間給与実態統計調査」