スバルが水平対向エンジンにこだわる理由:安全性と走行性能を追求する独自技術

スバルが水平対向エンジンの生産を開始して約60年。1966年5月14日に「スバル1000」へ初搭載されて以来、この独自のパワーユニットはスバルのコアテクノロジーとして、その車づくりの根幹を支え続けています。現在、国産車で水平対向エンジンを採用するのはスバルのみであり、世界的に見てもポルシェとスバルという極めて稀な存在です。なぜスバルは、この水平対向エンジンにこれほどまでにこだわり続けるのでしょうか。それは、このエンジンが持つ特性こそが、スバルが追求する理想のクルマの姿を最も合理的かつ高いレベルで実現できるからです。

スバルXV(クロストレック)のエンジンルームと水平対向エンジン。低重心設計と安全性がスバル車の特徴。スバルXV(クロストレック)のエンジンルームと水平対向エンジン。低重心設計と安全性がスバル車の特徴。

スバルが水平対向エンジンを選び続ける背景

スバルが水平対向エンジンにこだわる最大の理由は、その構造がクルマの「走り」と「安全性」というスバルが掲げる理念に深く合致しているからです。直列エンジンやV型エンジンでは実現が難しい、優れた回転バランス、少ない振動、そして決定的な低重心性。これらがスバルの考える「安心と愉しさ」を両立したクルマに不可欠な要素となっています。過去には新型エンジンや新型車の開発時に、直列エンジンやV型エンジンの開発も検討された経緯がありましたが、最終的には水平対向エンジンがもたらす数多くのメリットが採用の決め手となり、スバルの選択は揺るぎませんでした。軽自動車やリッターカークラスでは直列エンジンを自社生産し搭載していた時期もありますが、基幹車種においては一貫して水平対向エンジンが採用され続けています。

低重心・低振動がもたらす走行性能と快適性

水平対向エンジンは、クランクシャフトを中心にピストンが水平かつ左右対称に配置されています。一般的な直列エンジンやV型エンジンのピストンが上下方向に往復するのに対し、水平対向エンジンはピストンが横方向に往復します。この独自の動きにより、左右のピストンが互いの慣性力を打ち消しあうため、他のエンジン形式と比べて極めて少ない振動で滑らかな回転を実現します。また、エンジン本体の全高が低く抑えられているため、車両全体の重心を低くすることが可能です。低重心化は、コーナリング時の安定性を高め、優れたハンドリング性能に貢献し、ドライバーに安心感と「走りの愉しさ」を提供します。さらに、スバルの水平対向エンジンは「スバル1000」の時代からオールアルミ製であり、軽量かつコンパクトであることも、その走行性能と低重心のアドバンテージを一層際立たせています。

衝突安全性能における水平対向エンジンの優位性

スバルが水平対向エンジンにこだわるもう一つの重要な側面は、その優れた衝突安全性能です。エンジン本体の全高が低いという特徴は、万が一の前面衝突の際にエンジンが車体下へ潜り込むような構造を可能にします。これにより、エンジンが車室内へ侵入するのを防ぎ、乗員のフットスペースを確保し、大切な乗員を保護する効果があるのです。すべてにおいて「安全」を最優先するスバルの設計思想において、水平対向エンジンが持つこの特性は、まさになくてはならない要素であり、スバルの安全哲学を象徴する重要な特徴と言えるでしょう。

結論

スバルが長年にわたり水平対向エンジンにこだわり続けるのは、単なる伝統ではなく、低重心による卓越した走行安定性、低振動による快適性、そして衝突時の乗員保護に貢献する独自の安全性能といった、他のエンジン形式では得られない数々のメリットがあるからです。これらの特性が、スバルが目指す「安心と愉しさ」を提供するクルマづくりの哲学と合致し、ブランドの根幹を成す技術として進化し続けているのです。

Source link: Yahoo!ニュース