東京都練馬区の自宅で長男を刺殺したとして、殺人罪に問われた元農林水産事務次官の無職、熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判の初公判が11日、東京地裁(中山大行裁判長)で開かれた。熊沢被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
検察側の冒頭陳述によると、長男の英一郎さん=当時(44)=はアスペルガー症候群の診断があり、人付き合いが苦手で家庭内で暴力をふるうこともあった。このため大学進学を機に熊沢被告ら両親と別居。英一郎さんは職に就くが、平成20年からは仕事をせず自宅でゲームをするなどして過ごしていたという。
英一郎さんは事件1週間前に実家に戻ったが、ごみの処分について注意されたことで熊沢被告に暴行。熊沢被告は妻に「他に方法がない」との手紙を書いたほか、インターネットで「殺人罪 執行猶予」と検索していたことから「殺害を考慮に入れて生活していた」と指摘した。
一方、弁護側は「被告は長年、長男を必死で支えてきた」と主張。事件当日、英一郎さんは隣の小学校の運動会の音にいらだち、熊沢被告に「殺すぞ」と話したといい、「殺されるとの恐怖心でとっさにやむを得ず殺してしまった」と述べた。
起訴状によると、今年6月1日午後3時15分ごろ、自宅で英一郎さんの首などを包丁で多数回突き刺し、失血死させたとしている。熊沢被告は「息子を刺し殺した」と自ら110番通報した。