ウクライナ紛争が続く中、米国アラスカ州で開催された米ロ首脳会談は、ウクライナ国民の間に深い失望と複雑な感情を広げている。特に、ロシアによるウクライナ侵攻の終結を願う人々にとって、その結果は期待とは裏腹のものだった。
キーウに住むナタリア・リペイさん(66)は、米ロ首脳会談の生中継を見ながら、「私は息子の葬儀の後、今日また別の葬儀があった。平和を望む私の希望は今日死んだ」と語った。AP通信によると、リペイさんの34歳の息子は昨年、ウクライナ東部ドネツク地域で戦死。このドネツクは、ロシアのプーチン大統領が停戦の条件としてウクライナに兵力撤収を要求している地域である。
ロシアの攻撃によりウクライナ・ハルキウ地域で発生した火災と、消火活動にあたる緊急救助隊員の様子。
米ロ首脳会談:和解の雰囲気とウクライナの懸念
今回、プーチン大統領は10年ぶりに米国を訪問し、トランプ米大統領が敷いたレッドカーペットを踏み、笑顔と握手で迎えられた。これに先立ち、トランプ大統領は会談前に「アラスカ会談後にプーチン大統領が戦争中断に同意しない場合、ロシアは非常に深刻な結果に直面するだろう」と発言していた。しかし、実際の米ロ首脳会談の雰囲気は正反対で、和気あいあいとした中で共同記者会見が行われた。ウクライナ戦争に関する具体的な合意は発表されなかったものの、プーチン大統領は時折笑顔を見せたという。
ロイター通信は、プーチン大統領が国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が発行されているにもかかわらず、米国が彼を温かく歓迎する姿に、多くのウクライナ人が驚愕したと報じた。リペイさんは、この会談を「2022年にウクライナに侵攻したプーチン大統領が国際的孤立を解消して勝利した日」と感じ、「新たな喪失感」を覚えたと述べた。
ウクライナ国民の複雑な感情と批判
キーウ住民のカテリナ・プチェンコさん(30)はAFP通信に対し、「トランプ大統領はウクライナ側ではない。むしろプーチン大統領の友人のように見える」と指摘し、米国の姿勢への不信感を表明した。ウクライナ北東部の都市ハルキウで劇場マネージャーを務めるパブロ・ネブロエフさん(38)も、今回の会談を「無駄な会談だった」と厳しく批判。「ウクライナに関する問題は、ウクライナの国民と大統領が参加しなければいけない」と、当事者の重要性を主張した。
さらに、写真作家のイリナ・テフカフさん(50)は、ハルキウの現状に触れ、「交渉があってもハルキウではいかなる変化も感じられない。今でもハルキウではほぼ毎日砲撃がある」と述べ、現地での厳しい状況が続いていることを強調した。これらの声は、米ロ首脳会談がウクライナの現実にもたらす影響への深い懸念と不満を示している。
ゼレンスキー大統領の訪米と今後の展望
このような状況の中、ウクライナのゼレンスキー大統領は16日の声明で、18日に米国を訪問し、トランプ大統領と戦争終結について議論する会談を行うことを明らかにした。報道によると、トランプ大統領はゼレンスキー大統領との会談が順調に進めば、22日までに米国・ウクライナ・ロシアの三カ国首脳会談を開催する可能性を示唆している。
しかし、ウクライナ側は領土の譲歩に対して強い拒否の立場を取っており、三カ国首脳会談が実現する可能性は高くないと見られている。今後の外交的動きが、紛争の行方にどのような影響を与えるか、国際社会の注目が集まっている。
参考文献
- AP通信
- ロイター通信
- AFP通信
- 聯合ニュース
- ヤフーニュース: 米ロ首脳会談、ウクライナに広がる失望…「希望は今日死んだ」