2025年、富裕層の史上最多移住を予測:世界の富と主要移住先国

2025年には、世界の富裕層の移動が過去最高の水準に達すると予測されています。この傾向の最前線に立つのは、税負担の軽さと魅力的な生活環境を武器に9,800人もの富裕層を呼び込み、移住先ランキングで首位を獲得したアラブ首長国連邦(UAE)です。世界の資産移動は、安全性、税制、優れた生活環境といった要素に強く影響されており、数十億ドル規模の運用可能資産が国境を越えて移動することが見込まれています。

世界の富裕層移住の現状と主要国

「2025年版ヘンリー・プライベート・ウェルス・移住レポート(Henley Private Wealth Migration Report 2025)」によると、来る2025年には全世界で約14万2,000人の富裕層が国外に移住すると予測されています。この数字は、今年1月から5月にかけて収集されたデータと専門家の見識に基づいた暫定値であり、年末には確定値が公表される予定です。

移住先として特に注目されているトップ3は、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカ、イタリアです。これらの国々は、税制優遇策、一流の教育機関、そして投資家に有利な政策を備えた安全な地域として、世界の高額資産保有者(HNWIs)を強く引き付けています。移住を決定づける主な要因としては、個人の安全保障、魅力的な税制、そして質の高い生活環境が挙げられます。

2025年に富裕層の移住先ランキングで首位に立つアラブ首長国連邦(UAE)の活気ある都市景観と、税制優遇や魅力的な生活環境に惹かれる富裕層のイメージ。2025年に富裕層の移住先ランキングで首位に立つアラブ首長国連邦(UAE)の活気ある都市景観と、税制優遇や魅力的な生活環境に惹かれる富裕層のイメージ。

「ヘンリー・プライベート・ウェルス・移住レポート2025」の分析

本レポートは、コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズが、世界的な資産調査会社ニュー・ワールド・ウェルスと共同で作成しました。両社は、不動産・企業登記簿、リンクトイン(LinkedIn)での活動、ファミリーオフィスの所在地、ヘンリー&パートナーズの顧客基盤といった複数のデータソースを組み合わせて分析することで、15万人を超える富裕層の世界的な移動を追跡しています。

各国に移動する富の総額は、その国に流入する富裕層の人数と、彼らの平均純資産額(移住先の国や地域によって大きく異なる)を乗じて算出されます。この詳細な分析により、高額資産保有者を引き付けている主要な移住先国と、彼らが持ち込む莫大な運用可能資産の全容が明らかになります。

専門家が語る「転換期」と英国からの流出

ヘンリー・アンド・パートナーズでプライベートクライアント部門責任者を務めるドミニク・ボレック氏は、2025年を「転換期となる年」と表現しています。ボレック氏によると、史上最多となる14万2,000人の富裕層が国外に移住すると予測されており、10年にわたる追跡調査で初めて、イギリスからの富裕層の流出が世界で最も多くなる見込みです。これは、富裕層の間で、より良い機会、自由、そして安定が他の地域にあるという認識が深まっていることを明確に反映しています。

まとめ

2025年に予測される富裕層の記録的な移動は、世界の経済地図に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。UAE、アメリカ、イタリアが主要な移住先として台頭する一方で、イギリスからの富裕層流出が際立つことは、グローバルな資産配分と各国の魅力度を再考させる契機となるでしょう。この「富の移動」は、各国の政策立案者にとって、税制や生活環境の改善を促す重要な指標となります。