斎藤兵庫県知事の「終戦記念日」黙祷写真が物議 姿勢やSNS投稿に“パフォーマンス”との指摘

8月15日の終戦記念日、兵庫県知事・斎藤元彦氏(47)が自身のX(旧Twitter)に投稿した「黙祷」写真が、SNS上で大きな物議を醸しています。この日は、多くの場所で戦没者追悼式典が執り行われる厳粛な日ですが、斎藤知事の行動やその後のSNS投稿に対し、「パフォーマンスではないか」との指摘が相次ぎました。日本の平和と戦争の記憶が交差する特別な日に、公人の発信がどのような意味を持つのか、その背景と人々の反応を詳しく見ていきます。

甲子園での高校野球観戦とSNS投稿の経緯

斎藤知事は8月15日午前9時前、Xで「東洋大姫路、頑張ってください!」と、第107回全国高校野球選手権に出場中の地元名門校へエールを送りました。この投稿には、試合直前の阪神甲子園球場(西宮市)フィールドを背に、胸にユニオンジャック(英国旗)がプリントされた白のポロシャツ姿で自撮りをする斎藤知事の写真が添えられていました。知事はその後、外野スタンドで観戦し、東洋大姫路高校が福岡の西日本短大付属高校に3対2で競り勝ちベスト8進出を決めると、午前11時30分過ぎに「勝利おめでとうございます」と改めてXで祝福を寄せました。

終戦記念日への言及と知事の戦争観

兵庫県代表の勝利を間近で観戦した斎藤知事ですが、終戦記念日のこの日、兵庫県内では姫路市などで戦没者追悼式典が開催されていました。斎藤知事は同日夜7時40分ごろの投稿で、終戦の日に言及。「戦後80年の節目となります。私の祖父は海軍で南方戦線サイパン、ヤップ島からの帰還兵でした。幼い頃、祖父からよく戦地の話を聞かされました」「爆弾の破片が今も足に残っている」など、祖父から伝え聞いた壮絶な戦争体験を明かしました。

その上で、「今日の日本の平和と繁栄は、決して当たり前のものではありません。祖国のために身命を賭した戦没者の尊い犠牲と、焼け野原からの復興を担った先人達の苦難の上に築かれています」と訴え、「戦争経験者が少数になる今こそ、私達は、80年という歳月の重みを胸に刻み、平和で豊かな日本を次世代に確実に繋いでいかなければなりません。県民の皆様とともに、安全で安心な兵庫、平和な日本の未来を歩んでまいります」と平和への決意を新たにしました。

先の大戦において、兵庫県は神戸市への大規模空襲をはじめ各地で甚大な被害を受け、姫路市も川西航空機姫路製作所への爆弾攻撃や市街地の焼夷弾爆撃により、多数の死傷者を出したことが記録されています(総務省調べ)。

「黙祷写真」が招いたSNS上の波紋

平和への決意を表明した斎藤知事の投稿に添えられた一枚の写真が、大きな物議を醸しました。その写真は、甲子園の外野スタンドと見られる場所で、斎藤知事が目をつぶり、「黙祷」をするかのような姿を横から撮影したものでした。知事の背後はボカシがかけられているものの、スタンド席に多数の観客がいる様子がうかがえます。

甲子園大会では毎年、終戦記念日の正午に、選手、観客が一体となって黙祷を捧げる慣例があります。この日も、斎藤知事が観戦した東洋大姫路高校戦後の第二試合開始直前、正午に黙祷が行われていました。その際、観客は起立していたにもかかわらず、斎藤知事がアップした写真の背景に写り込んだ観客が「座っているのではないか」との指摘がX上で相次ぎ、「黙祷の時間外に撮られた『パフォーマンス』ではないか」という声が上がったのです。

X上では、「斎藤元彦さんの背景の人々は黙祷されていません。リラックスされている。慌てて1人黙祷でしょうか?」「周りは座ってるのに斎藤元彦だけ黙祷してる‥妙だな」「周りの人は座ってますけどあなただけ起立し黙祷ですか!」「やってる感丸出しのポーズ」といった批判的な意見が多数投稿されました。

一方で、斎藤知事の近くの観客が「立っている」という擁護の声も一部で聞かれました。「真ん中の人は立っているよね?」「後ろの人達が座ってる? 立ってるように見えるけど?」「直ぐ後ろの方、立ってるように見える。黙祷が終わった直後じゃないですか? 何がダメなんでしょう」「みんな立ってるわ こういう終戦の日にも斎藤知事アンチはケチをつけるんやな。神経疑うわ」といった反論も寄せられました。

知事の意図と「パフォーマンス」論争の深層

本誌が18日に知事秘書課の担当者に撮影時の状況を問い合わせたところ、斎藤知事は「プライベート」で東洋大姫路高校の試合を観戦したと回答。関連するSNSの投稿については「お答えできない」との見解を示しました。

写真から詳細な状況を判断することは困難ですが、ある政治部記者は、斎藤知事に「パフォーマンス」という指摘が寄せられた背景について次のように分析します。「周囲の観客が座った後も、斎藤知事が少し長く黙祷を続けていたという可能性も大いにあるため、周囲が『座っている』『立っている』はそこまで重要ではないと思います。それよりも、黙祷という厳かな時間を意図的に撮影し、それをSNSにアップする姿にアピールめいたものを感じる人が多いのではないでしょうか。」

さらに、この記者は、斎藤知事が同日にインスタグラムにも投稿した別の写真が、その印象を強めた可能性を指摘します。
斎藤元彦兵庫県知事が終戦記念日にインスタグラムに投稿した、笑顔でかき氷を持つ自身の写真。斎藤元彦兵庫県知事が終戦記念日にインスタグラムに投稿した、笑顔でかき氷を持つ自身の写真。「東洋大姫路高校の試合の後、笑顔でかき氷を手に持った写真をインスタグラムにもアップしていました。プライベートとはいえ、県トップが終戦記念日にこうした投稿をしたことに、『緊張感がない』『パフォーマンス』といった捉えた人がいたのではないでしょうか」。

実際、斎藤知事の「黙祷写真」をめぐっては、X上で次のような本質的な疑問も投げかけられています。「座ってるか、立ってるかは分からないけど、黙祷してるところを横から撮らせてるのがもう意味わからん」「よく考えたら本当に正午の黙祷の時刻だったとしても自分が黙祷してる写真をなぜ上げる必要があるのか?」「黙祷で自分を被写体にしてSNSにアップするかねフツー?」「え?みんな黙祷してる時に自身の姿をカメラマンに撮らせたの?そうだとしたらもっとヤバくね?」

まとめ

斎藤兵庫県知事が終戦記念日に投稿した「黙祷」写真と関連するSNS発信は、その意図とは異なる形で、公人の行動とメディア発信のあり方、そしてデリケートな追悼の日の振る舞いについて、社会的な議論を呼び起こしました。公職に就く者の発信は、時に個人のプライベートな行動であっても、国民の注目を集め、様々な解釈を生む可能性があります。特に「終戦記念日」という歴史的かつ感傷的な意味合いを持つ日において、その発信が「パフォーマンス」と受け取られないよう、より一層の配慮と慎重さが求められることを示唆する事例と言えるでしょう。

参考資料

  • 時事通信
  • 総務省