日本のロックミュージシャン、世良公則氏(69)が、北海道に広がる日本最大の湿原「釧路湿原」付近で進行中の大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設に対し、深い懸念を表明しました。この計画は、貴重な自然遺産である湿原の生態系に深刻な影響を及ぼすとして、著名人や専門家から批判の声が上がっています。特に、国の天然記念物であるタンチョウへの影響や、国民が負担する再生可能エネルギー賦課金の使途についても疑問が投げかけられています。
ロックミュージシャン世良公則氏、釧路湿原のメガソーラー建設に懸念を表明
釧路湿原の現状とタンチョウへの深刻な影響
釧路市を拠点に希少猛禽類の保護活動を行う「猛禽類医学研究所」の齊藤慶輔代表は、自身のX(旧ツイッター)で、環境省釧路湿原野生生物保護センターに隣接して進められているメガソーラー建設現場の状況を動画と共に公開しました。齊藤氏によると、6000年以上の歳月をかけて形成された貴重な湿原が、大量の土砂によって埋め立てられている現状が露わになっています。
この地域は以前からタンチョウのペアが生息していることが確認されていたにもかかわらず、事業者による工事前の現地調査は適切に行われず、「影響がない」との見解を地元NGOから得たと主張しています。しかし、実際の工事現場のすぐ近くでは、ヒナを連れたタンチョウの家族が連日確認されており、巣が工事現場に近接していたことは明白です。タンチョウ研究の第一人者である正富宏之氏も、「タンチョウの生存(繁殖)には、巣だけでなく、餌を確保できる環境(縄張り・行動圏)全体が必須」と指摘し、この建設に強い危機感を抱いています。齊藤氏は、一刻も早い工事中断と、タンチョウの保全対策を行政・政治主導で実施するよう強く訴えています。
著名人からの懸念表明と再エネ賦課金の使途
世良公則氏は、齊藤氏の投稿を引用し、「どこが地球環境に優しいのか もう取り返しのつかない状況」と、メガソーラー建設が環境に与える不可逆的なダメージを憂慮しています。さらに、「国民が電気料金の約13%毎月支払っている再エネ賦課金 それがこれらを支えている」と述べ、国民が負担する再生可能エネルギー賦課金が、このような環境破壊を伴う事業を支援している現状に対し、厳しく疑問を呈しました。
この問題に対しては、世良氏以外にも多くの著名人が声を上げています。モデルの冨永愛氏(42)は以前、自身のXで「なんで貴重な生態系のある釧路湿原にメガソーラー建設しなきゃならないのか誰か教えて欲しい」と投稿し、素朴ながらも核心を突く疑問を投げかけました。また、アルピニストの野口健氏(51)も、「これは本当に酷すぎる…。政治家たちは何をやっているのか。これを止められない様ならば政治家なんぞ「いらない」だろう。どれだけ裏で利権が動いているのかと穿った見方をしてしまう。釧路のこの凄まじく愚かなメガソーラー計画に限らず日本中で悲鳴が上がっている」と、政治の無策と利権の可能性を強く示唆し、全国的な再生可能エネルギー開発における環境破壊問題に警鐘を鳴らしました。
環境保護とエネルギー政策のバランスへの課題
釧路湿原のメガソーラー建設問題は、再生可能エネルギー推進という名目の裏で進行する環境破壊、そしてその費用を国民が負担しているという、日本のエネルギー政策が抱える構造的なジレンマを浮き彫りにしています。クリーンエネルギーへの転換は喫緊の課題であるものの、それがかけがえのない自然遺産の犠牲の上に成り立つのであれば、その正当性は大きく問われるべきです。
この問題は、単なる地方の環境問題に留まらず、国のエネルギー政策、環境保全、そして政治の役割について、私たち国民一人ひとりが深く考え、声を上げるべき喫緊の課題であることを示しています。今後、行政や政治がどのように対応し、貴重な釧路湿原の生態系が守られるのか、その動向が注目されます。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 「世良公則、参院選落選もXで北海道・釧路湿原メガソーラー建設を憂う」
- 日刊スポーツ: 「【写真】釧路湿原のメガソーラー建設の様子」
- 齊藤慶輔 (猛禽類医学研究所) 公式X (旧Twitter) アカウント
- 冨永愛 公式X (旧Twitter) アカウント
- 野口健 公式X (旧Twitter) アカウント