高市早苗氏が自民党の新総裁に就任し、高い支持率を背景に政権が発足しました。しかし、早くも台湾有事に関する国会での「存立危機事態」発言を巡り、日中間の緊張が急速に高まっています。自民党内でも「右派」と評される高市政権にとって、この外交問題は試金石となるでしょう。インターネット上では、リベラル層から政権のリスクを指摘する声が上がる一方、保守層からは「よく言った」「中国におもねる必要なし」と喝采が沸き起こっています。近年、日本国内で高まる「右傾化」や「保守化」の波に後押しされている高市政権ですが、この流れは「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ政権をはじめ、世界各地で見られる現象です。では、日本は世界と比較した時、客観的にどのような地点に位置しているのでしょうか。本稿では、元国連職員の著述家・谷本真由美氏が指摘する「日本人の特性」を紐解きながら、日本が世界と異なる理由、そして「高信頼型社会」としての日本の独自性を考察します。
高市政権の船出と高まる国際的緊張
日本の新たな政治の顔として注目を集める高市早苗新総裁は、その高い支持率とともに政権の船出を迎えました。しかし、早くも台湾を巡る問題が浮上し、その影響は日中関係に波紋を広げています。国会における「存立危機事態」に関する高市氏の発言は、国際社会、特に中国との間で緊張を高める要因となり、日本の外交政策における課題を浮き彫りにしています。この状況に対し、国内の世論は二分されています。リベラル層からは、高市氏の強硬な姿勢がもたらす地政学的リスクへの懸念が示される一方で、保守層からは、中国に対し毅然とした態度を取る高市氏への強い支持と称賛の声が上がっています。この激しい議論は、日本社会における「保守化」の潮流がいかに深く根付いているかを示唆しており、高市政権が直面する国内および国際的な課題の複雑さを浮き彫りにしています。
会見する自民党の高市早苗新総裁
世界の潮流と異なる日本の「保守化」
日本ではしばしば「日本は非常に保守的な社会である」という言説が左翼を中心に広まっていますが、この認識は外部から日本を観察すると、異なる側面が見えてきます。ロンドン在住の著述家である元国連職員の谷本真由美氏(“めいろま”としてXで多くのフォロワーを持つ)は、その新連載「世界と比較する日本の保守化」の中で、日本の保守が他の先進国や途上国の保守とはかなり異なる特性を持つと指摘しています。日本国内にいると気づきにくいこの違いは、異文化の中で生活や仕事を通じて日本社会を眺めることで初めて明確になるものです。
この「日本人の特性」は、日本の地理的条件である島国としての独立性や、大陸と直接的に繋がらないという歴史的背景によって形成されてきました。これは「日本の特殊性」とも呼ばれますが、どの文化圏にもそれぞれの特殊性があるため、より正確には「日本人の特性」と呼ぶのが適切でしょう。この特性は、これまで多くの文化人類学者、社会学者、心理学者、そして政治学者によって繰り返し指摘されてきた重要な観点です。
日本は「高信頼型社会」の典型か
アメリカの著名な政治学者フランシス・フクヤマは、その著書『Trust: The New Foundations of Global Prosperity』や社会資本論に関する論文の中で、日本を「高信頼型社会(high-trust society)」の代表格として位置づけています。これは、社会全体で人々が互いに高いレベルで信頼し合う特性を持つ社会を指します。フクヤマのこの分析は、日本社会の構造や人々の行動様式が、相互信頼を基盤として築かれていることを示唆しており、これが他国との保守化の様相の違いにも影響を与えていると考えられます。このような「高信頼型社会」としての日本人の特性は、集団主義や協調性を重んじる文化と深く結びついており、政治的変動や国際関係においても、その独自の対応を生み出す要因となっているのです。
結論
高市政権の誕生とそれに伴う台湾有事に関する発言は、日本国内の「保守化」の潮流と国際的な緊張を改めて浮き彫りにしました。しかし、元国連職員の谷本真由美氏が指摘するように、日本の保守化は単純な右傾化とは異なり、その根底には日本の地理的・歴史的条件によって培われた「日本人の特性」が存在します。フランシス・フクヤマが日本を「高信頼型社会」の代表例と位置づけたことは、この特性が日本社会の相互信頼という独自の基盤の上に成り立っていることを示しています。日本が世界と比較してどのような位置にあるのかを客観的に理解するためには、こうした「日本人の特性」を深く洞察し、外部からの視点を取り入れることが不可欠です。この独自性を理解することこそが、高まる国際的課題に直面する日本の進むべき道を考える上で重要な鍵となるでしょう。




