沖縄で深刻化する「ゾンビタバコ」:危険ドラッグ蔓延の背景と若年層への影響

近年、若年層を中心に、違法薬物を含む「ゾンビタバコ」と呼ばれる危険ドラッグが深刻な社会問題として全国的に流行の兆しを見せています。特に沖縄県では、その蔓延が顕著であり、関連する逮捕者も相次いでいます。本記事では、この危険ドラッグの正体とその危険性、そしてなぜ沖縄でこれほど広がりを見せているのか、その背景に迫ります。

若年層を襲う「ゾンビタバコ」の実態と危険性

「ゾンビタバコ」とは、使用者がまるで意識が朦朧としたゾンビのようになることから名付けられた俗称で、日本では未承認の医薬品成分「エトミデート」を含む危険ドラッグを指します。電子たばこ用のリキッドとして吸引されるケースが多く、吸引後には震えや叫び声を伴う興奮状態、あるいは意識の混濁を引き起こすことが確認されています。

沖縄県内では、この「エトミデート」の使用や所持を巡る逮捕が頻発しており、その危険性が改めて浮き彫りになっています。厚生労働省は本年5月、エトミデートを所持や使用が禁止される「指定薬物」に追加し、厳格な取り締まりを強化していますが、その一方で蔓延は止まらない状況です。

危険ドラッグ「ゾンビタバコ」使用が疑われる男性の様子危険ドラッグ「ゾンビタバコ」使用が疑われる男性の様子

なぜ沖縄で危険ドラッグが蔓延するのか?

沖縄県がホームページ上で「『笑気麻酔』と称する、国内未承認の医薬品成分を含む危険ドラッグにご注意ください!!」と注意喚起を行うほど、県内での蔓延は深刻です。薬物事情に詳しいジャーナリストの石原行雄氏は、その背景として地理的な要因を指摘します。

石原氏は、沖縄が中国や台湾といった国・地域と物理的に近い点を挙げ、海外からの薬物密輸ルートとして利用されてきた歴史があることに言及しています。今回の「ゾンビタバコ」の蔓延も、同様のルートが関係している可能性を危惧しています。さらに、中国大陸のマフィアと繋がりのある日本の密売人や暴力団組織が、新たな「シノギ」(資金源)として危険ドラッグの販売に乗り出している可能性も示唆しており、問題の根深さを物語っています。

危険ドラッグ撲滅に向けた警戒強化

沖縄における「ゾンビタバコ」の急速な広がりは、単なる薬物問題にとどまらず、社会全体の安全を脅かす深刻な課題です。特に若年層への影響は計り知れず、早期の対策と意識向上が急務とされています。厚生労働省による指定薬物への追加や警察による取り締まり強化はもちろんのこと、地域社会、教育機関、そして保護者が一体となって、危険ドラッグの脅威に対する正確な知識を共有し、警戒を強めることが、これ以上の蔓延を防ぐために不可欠です。


参考文献: