8月末以降に本格化すると見込まれる「秋の大政局」は、日本政治の未来を左右する重大な局面を迎えています。中でも、与野党間の勢力図を大きく変動させる可能性を秘めた自民党内の「石破茂氏降ろし」の行方に不透明感が増す中、ある一人の人物の言動に政界全体の注目が集まっています。その人物とは、菅義偉元首相です。
与野党関係の安定化と菅氏の役割
去る7月の参議院選挙での敗北により、衆参両院で少数与党となった自民・公明の連立政権は、厳しい政権運営を迫られています。今秋に召集が予定されている次期臨時国会を安定的に乗り切るためには、一部野党との連立、あるいは部分的な協力関係を構築し、政権基盤を強化することが喫緊の課題となっています。政府・与党関係者の間では、「日本維新の会を取り込むのが最も現実的な近道だが、その際の重要なパイプ役は菅義偉元首相しかいない」との声が多数を占めています。これは、日本維新の会が野党第一党として影響力を増す中、彼らとの連携が政権安定化の鍵を握るという認識に基づいています。
「ポスト石破」を巡るキングメーカー争い
現在の政局で想定される主なシナリオは、①石破政権の継続、または②「ポスト石破」による新政権の樹立、のいずれかです。特に②のケースにおいては、小泉進次郎氏を首相とする政権の可能性が有力視されており、その実現性において菅元首相の存在が極めて重要視されています。「小泉氏の後見人であり、さらに安倍・菅政権時代から日本維新の会との密接な関係を維持しているのは菅氏だけ」という見方が、政界の大勢を占めています。
そもそも「秋の大政局」を前に、自民党内では首相経験者である菅氏、麻生太郎最高顧問、そして岸田文雄元首相の三者による「水面下でのキングメーカー争い」が激化していると、閣僚経験者からも指摘されています。党中枢の副総裁として強い影響力を持つ菅氏が、今後どのような動きを見せるのか、与野党幹部が固唾をのんでその動向を見守っている状況です。
秋の大政局で重要な鍵を握る小泉進次郎農水相の動向。自民党内の次世代リーダー候補として注目が集まる。
菅氏の体調と今後の政局の行方
しかし、菅氏には以前から体調不安説が囁かれており、周辺からは「今後の体調次第では、ライバルである麻生氏や岸田氏に主導権を奪われかねない」といった懸念の声も聞かれます。このため、「今後の政局の展開は、まさに体調も含めた菅氏自身の状況に大きく左右される」というのが実情です。
政界で様々な憶測が飛び交う中、菅氏自身は「あえて目立った行動や発言を控え、自民党内の動きを慎重に見極めようとしている」と側近は述べています。当面の政局の大きな転換点となるのは、8月末に行われる見通しの自民党執行部による「参議院選挙敗北の総括」と、それに伴う森山裕幹事長の進退表明となるでしょう。これらの動きが、秋の大政局における菅元首相の役割と、自民党内の権力闘争の新たな局面を決定づけることになります。