サッカー日本代表元監督の岡田武史氏が学園長を務めるFC今治高等学校 里山校(FCI)は、その革新的な教育カリキュラムで開校前から注目を集めてきました。授業や学習スタイルに柔軟性を持たせ、テストを廃止し、午後は芸術・探究・野外活動に充てるなど、「自由」と「自主性」を重んじる独自の学びを提供しています。教育ジャーナリスト中曽根陽子氏が7月に開催されたオープンスクールに参加し、開校から1年半が経過した生徒たちの生の声と学校の現状をレポートします。
FC今治高等学校 里山校の生徒たちが自由な学びを実践する様子。岡田武史氏が提唱する教育理念が反映された学校風景。
生徒が牽引する入学者の倍増:主体性教育の成果
2024年4月に開校したFC今治高等学校 里山校は、初年度こそ募集定員に満たない34人でのスタートとなりました。しかし、2年目となる今年は定員を上回る85人の2期生を迎え、入学者数が倍増するという目覚ましい成果を達成しています。この成功の立役者となったのが、1期生たちが企画・運営した前回のオープンスクールでした。
学校側は生徒たちにすべてを任せ、開催当日まで内容を把握していなかったそうですが、蓋を開けてみれば、生徒たちは自身の言葉で学校への思いを語り、来場者との対話の場を設けるなど、岡田学園長も驚くほど素晴らしい内容だったといいます。この出来事は、生徒の主体性に任せる教育が早くも形となった瞬間であり、「ここで自分も学びたい」という共感を呼び、入学者数増加に大きく貢献しました。岡田学園長は「まだまだ未完成。チャレンジが続いている」と語るものの、生徒たちの自律的な成長が学校を動かしていることが伺えます。今回も2期生による2回目のオープンスクールが開催され、筆者は現地でその様子を取材しました。
「自由」の二面性:「Good」と「Bad」に現れる生徒の葛藤
会場に入ると、生徒たちの元気な案内と、舞台でフリートークを繰り広げる金髪の生徒たちの姿が目に飛び込んできました。来場者と積極的に対話する生徒もおり、2期生一人ひとりが自身の役割を懸命に果たそうとする姿が見られました。オープンスクール開始時には、愛媛県内だけでなく九州、関西、関東からの参加者も会場を埋め尽くし、FC今治高等学校 里山校への関心の高さが浮き彫りになりました。
オープンスクールの「FCIのリアル」と題されたパートでは、1期生のアンケート結果をもとにしたテキストマイニングによる「Good」と「Bad」が紹介されました。特に興味深かったのは、「自由」という言葉が両方の側面で共通して挙げられていた点です。
「この学校には何でも挑戦できる自由がある。しかし、自由は自分勝手と隣り合わせだ」という声がある一方で、「自由ということは、何でも自分たちで考えなくてはいけない不自由さもある。それでも、自由だからこそ個性を発揮でき、何にでも挑戦できる。挑戦すれば失敗もするが、それがこの学校が大切にする『エラー・アンド・ラーン』だ。何ができるかわからないことに挑戦するからこそ、ワクワクし、成長できる」といった生徒たちの本音も披露されました。これらのアンケート結果からは、「自由」という恵まれた環境の中で、生徒たちが葛藤し、自らを可視化していく過程が鮮明に浮かび上がっていました。入学からわずか4カ月で、2期生たちは「自由」な環境の中で、悩み、ぶつかり、そして挑戦することで、着実に自己を見つめ、成長の道を歩んでいるようです。
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/18eaac79dc983fc9b87d4baf3d6cb72b0b662c97