8月17日に放送された『おしゃれクリップ』(日本テレビ系)で、元サッカー日本代表の松井大輔(44)との離婚を公表した女優の加藤ローサ(40)。突然の報告とともに視聴者の注目を集めたのは、離婚後の二人の心境における“温度差”であった。日本社会で著名人の離婚が報じられる際、その背景にある夫婦間のコミュニケーションや個々の感情の変化は常に大きな関心事となる。本稿では、加藤ローサと松井大輔の離婚を巡る発言から、その夫婦関係の軌跡と、現代の家庭におけるジェンダーロールの課題を考察する。
加藤ローサのインスタグラムより、笑顔を見せる加藤ローサ。離婚公表後の彼女の心境の変化が注目されている。
離婚後も同居、異なる心境の背景
加藤ローサによると、離婚時期は今年よりも「少し前」であり、2011年と2014年に誕生した二人の男児と松井大輔と共に、離婚後も従来の家で生活を続けているという。この事実自体、一般的には珍しい形態であり、二人の関係性に新たな側面を提示している。番組では松井大輔のインタビュー映像も流れ、彼は「紙(離婚届)の問題だけだと思う」「僕たちは多分変わらないままだと思います」と語り、今後も関係が“変わらない”ことを強調した。彼の言葉からは、形式的な変化はあっても、実生活や感情面での大きな変動はないという認識がうかがえる。
一方で、加藤ローサの心境は対照的だった。彼女は「彼は変わらず、自分の好きなことだけを追いかけているタイプで、なので変わらないんですね。やっぱり、籍が入っている、入っていないとでは、私の気持ちがけっこう変わって。“良い妻でいなきゃ”って思っちゃって」と心情を吐露。家庭と仕事の両立が「めっちゃ大変だった」と告白し、「今は、力が抜けたというか、そもそも妻じゃない。頑張らなくていいと思えるようになって、私はすごく変わったなと思ってます」と述べ、松井大輔とは異なる、大きな心境の変化が訪れたことを明らかにした。この「良い妻でいなきゃ」という重圧からの解放は、多くの女性が共感する部分であり、離婚が彼女にとっての新たなスタートを意味することを示唆している。
加藤ローサが語った「俺様」な夫への本音
加藤ローサの「頑張らなくていい」という言葉の背景には、これまでの家庭生活で重ねてきた苦労があったことが、過去のインタビューからも読み取れる。2021年4月の『クランクイン!』のインタビューでは、《『ママがやればいいじゃん。俺たちの世話をするのは当然でしょ』みたいな、家庭内の序列が低いのを変えていかないと(笑)》と冗談交じりに不満を語っていた。さらに翌年4月の『Yahoo!ニュースオリジナル』のインタビューでは、《とにかく“俺様”な人なので。一緒に住んでみて、想像以上に俺様だった》と、松井大輔の「俺様ぶり」に言及し、その性格に対する率直な感想を打ち明けている。
番組での二人の対照的な発言に加え、こうした加藤ローサの過去のエピソードが離婚公表と共にネットニュースなどで取り上げられたことで、SNSでは加藤ローサに同情するような声が多く上がった。ユーザーからは、「奥さんの本音がよくわかる」「加藤ローサさんの気持ちが痛いほどわかる」といった共感の声や、松井大輔の言動に対する疑問の声が寄せられた。これは、有名人の夫婦関係が、多くの人々の家庭内の経験と重なり、社会的な議論を巻き起こす典型的な例と言えるだろう。
松井大輔が自負した「イクメン」と変わらぬ「俺様ぶり」
加藤ローサの“証言”以外にも、松井大輔本人の過去の発言から、子育てに対する表面的な態度や、指摘されていた“俺様ぶり”がうかがい知れる。結婚から約2カ月後の2011年8月、当時フランスのチームでプレーし、老舗サッカー専門誌『サッカーマガジン』(ベースボール・マガジン社)で連載を持っていた松井大輔は、記事のなかで、料理上手な加藤ローサを《すごくおいしくて、これからはすべて任せることができそうです》と褒めつつ、きたる第一子の誕生にこんな思いを馳せていた。
《でも、僕もせっかく料理をマスターしたので、たまにやるのもいいですね。何しろ僕は『イクメン』なので。そう、『育児をするメンズ』です》
《家族が公園で歩いている姿などを見るたびに、南仏の浜辺で自分の子どもが遊ぶ傍ら、海をボーっと眺めている、というシーンを思い描いて、ゆとりある生活にあこがれていました。それからこれを実践するのが、すごく楽しみです》
そしてこの年の12月に長男が誕生。翌年2012年4月の連載では、松井大輔はしっかりと「イクメン」に徹していることを誇らしげに綴っていた。《以前「イクメン(育児をする男)」と言いましたが、その点に関しては順調です。おむつも当然のように替えてますし、お風呂に入れるのも僕の役目。ちゃんと抱っこ帯も持ってますから》《赤ちゃんを胸に乗せて、ピンクの風呂敷みたいなのをつけ、パリを歩く僕の姿なんて想像できないでしょう!》と、自身の「イクメンぶり」に曇りのない自信を見せた。
しかし、結婚10周年の節目を迎えた直後の2021年11月、元サッカー日本代表・内田篤人(37)がスポーツ専門VOD「DAZN」で展開するチャンネル「内田篤人のFOOTBALL TIME」にゲスト出演した際の言動は、彼の「俺様ぶり」が変わっていなかったことを示唆している。内田篤人から「松井さんの奥さん、めちゃめちゃ綺麗ですよね」と投げかけられると、松井大輔は足を大きく広げて座り、首をかしげながら、「いや~、どうなんでしょうね。どうなんでしょう」とはぐらかした挙句、「でも、顔は凄いちっちゃい。あとすっぴんも変わんない。それは凄い」と評した。
この映像が離婚公表後にX(旧Twitter)で拡散すると、松井大輔の“上から目線”とも取れる態度に、SNSユーザーからは《どう考えても美しい加藤ローサが妻なのに綺麗と言わない俺!って感じだよね》《昭和の男だな… 奥さん褒められていや~とかいうの、やめた方がいいよ 何で結婚したのか謎 自分の価値も下げてることに早く気づいた方がいいと思う》《「どうかな〜」ってのは茶化してるだけというのは分かるからそんな大した事ないと思うんだけど、ただこの映像から、松井大輔が亭主関白というか、支配欲の強いオレ様男子なのはメチャクチャ伝わってくるね》といった疑問や批判の声が多く上がった。これらの反応は、松井大輔の過去の発言が、彼の無意識のジェンダーロールや家庭内での力関係を示唆していると受け止められたことを浮き彫りにしている。
離婚を経て見つめ直す、現代の夫婦像
加藤ローサと松井大輔の離婚公表、そしてそれに続く二人の「温度差」のある発言は、現代社会における夫婦関係の複雑さと、家庭内での役割分担、そして自己認識の重要性を改めて問いかけるものとなった。特に加藤ローサが感じていた「良い妻でいなきゃ」というプレッシャーからの解放は、多くの働く女性、子育て中の女性が抱える共通の課題を浮き彫りにしている。彼女の言葉は、自己犠牲の上に成り立つ関係ではなく、個人の幸福と精神的自由を追求することの正当性を示唆する。
一方、松井大輔の過去から現在に至るまでの言動は、彼が無自覚のうちに「亭主関白」的な価値観を保持していた可能性を示している。彼が自負した「イクメン」の姿も、加藤ローサが抱えていた心境の変化と比較すると、表面的な役割の遂行にとどまっていたのではないかという見方もできる。有名人の離婚は、単なるゴシップとして消費されるだけでなく、社会が夫婦のあり方、家庭における男女の役割、そしてより良い関係を築くためのコミュニケーションについて深く考えるきっかけを提供する。加藤ローサの「力が抜けた」という言葉は、現代を生きる多くの人々にとって、自身のパートナーシップを見つめ直す貴重な示唆となるだろう。
参考文献
- 『おしゃれクリップ』(日本テレビ系)
- 『クランクイン!』2021年4月インタビュー
- 『Yahoo!ニュースオリジナル』2022年4月インタビュー
- 『サッカーマガジン』「松井大輔 フランスの日々 PETIT a PETIT」2011年8月、2012年4月連載
- スポーツ専門VOD「DAZN」チャンネル「内田篤人のFOOTBALL TIME」2021年11月
- X(旧Twitter)でのユーザーの反応