大谷翔平選手結婚会見に見る日米メディアの質問スタイルの違い:国際インタビュアーが解説

2025年11月、ロサンゼルス・ドジャースのMLBワールドシリーズ2連覇に大きく貢献し、ナショナル・リーグMVPを満票で受賞、4度目のMVP獲得を果たした大谷翔平選手(31)。プライベートでは結婚し、一児の父となった彼の結婚発表は、2024年2月末に自身のInstagramで公表され、翌日には記者会見が開かれました。この会見で日米メディアから出された質問には、両国の報道姿勢における顕著な違いが見られたといいます。国内外のVIPや経営者を含む2000人以上にインタビュー経験を持つ国際インタビュアーの斉藤真紀子さんが、その違いを分析します。

プロフェッショナルな場における質問の原則

相手がプロフェッショナルである場合、最初の質問で相手の専門領域に深く踏み込み、自身の関心や敬意を伝えることで、距離は劇的に縮まります。事前にその人物の業績を深く調べ、相手に「この人は自分のことをよく理解している」と認めさせることで、強い信頼関係が生まれることが多いものです。一方、公の場やビジネスの場面で、いくら興味があったとしても、仕事と直接関係のないライフスタイルやプライベートに関する質問をすると、「この人は本当に自分に関心があるのか」と疑問を持たれ、信頼を失うリスクがあります。相手が本当に知ってもらいたいことは、プロフェッショナルとして全力を注いできた事柄だからです。インタビュアーである斉藤さんも、この点には細心の注意を払っていると述べています。

大谷翔平選手の結婚会見:日米メディアの具体的な質問内容

大谷翔平選手は結婚をSNSで公表した後、記者会見でメディアからの質問に応じました。日米双方から多数の記者が集まりましたが、その質問の仕方には興味深い特徴がありました。

アメリカメディアのアプローチ

アメリカのメディアは、質問の前に「野球のことではありませんが……」や「差し支えなければ……」といった前置きをすることで、プライベートな領域への配慮を示しました。また、別のアメリカ人記者は、結婚のタイミングとフリーエージェント(FA)や移籍の時期との関連性について質問しており、個人の出来事をプロフェッショナルなキャリアと結びつける視点が見られました。

日本メディアのアプローチ

対照的に、日本の記者団からの質問は、私生活にかなり深く踏み込んだ内容でした。「子どもは何人欲しいか」「奥さんが作ってくれる好きな食事」「プロポーズの言葉」といった具体的なプライベートに関する質問が目立ち、個人の生活に焦点を当てる傾向がうかがえました。

大谷翔平選手が会見で質問に答える様子大谷翔平選手が会見で質問に答える様子

国際インタビュアーが語る「信頼を築く」対話術

斉藤真紀子さんは、公の場で相手と信頼を築くためには、「相手が本当に知ってもらいたいこと」を理解し、それに焦点を当てることが不可欠であると強調します。それは、その人のプロフェッショナルな活動や成果であり、そこにこそ相手が全力をかけて打ち込んできた真摯な姿があるからです。興味本位でプライベートに踏み込む質問は、時に相手との間に不信感を生み出し、長期的な関係構築を妨げる可能性があるため、特に注意が必要であると指摘しています。

結論

大谷翔平選手の結婚会見における日米メディアの質問スタイルの違いは、両国の文化や報道倫理におけるプライバシーへの意識の差を浮き彫りにしました。国際インタビュアーの斉藤真紀子さんの分析が示すように、プロフェッショナルな場においては、相手の専門領域や実績に敬意を払い、仕事と関連性の高い質問をすることが、信頼関係を構築し、より質の高い情報や対話を引き出す鍵となります。公の人物であっても、そのプライベートな領域にどこまで踏み込むべきか、メディアには常にそのバランスが問われていると言えるでしょう。

参考文献