「人は100年生きる時代」と言われる現代において、お金、孤独、健康の不安なく老後を迎えられる人はどれほどいるでしょうか。多くの人々が漠然とした「年を取ることへの恐怖」を抱える中、人生の晩年を謳歌する方も存在します。その活力、気力、そして生きがいは、一体どのようにして培われたのでしょうか。本稿では、”後期高齢者”となってもなお輝きを放つ先達たちの声に耳を傾け、老後を豊かに生き抜くヒントを探ります。今回は、82歳で「台所をリフォーム」し、こだわり抜いた品々に囲まれて暮らす髙森寛子さん(88歳)の、充実した日々について深掘りします。
88歳・髙森寛子さんが重視する「暮らしのポイント」
終の住処をどのように考えるかは、人生の幸福度と深く関わります。「令和6年版高齢社会白書」(内閣府)が示すように、全国の65歳以上の男女を対象とした調査では、住宅と地域のどちらにも高い満足度を持つ人ほど、幸福感を強く感じていることが明らかになっています。
88歳で漆器ギャラリー「スペースたかもり」を主宰する髙森寛子さん。豊かな老後を過ごす姿。
普段使いの漆器を中心としたギャラリー「スペースたかもり」を主宰し、エッセイストとしても活躍する髙森寛子さん(88歳)もまた、現在の住まいを心から気に入っています。43歳の時、美しい桜並木に魅せられて移り住んだこのマンションは、40年以上の歳月を経た今もなお、髙森さんの“豊かな人生の拠点”であり続けています。東京生まれ、東京育ちの髙森さんが婦人雑誌出版社に就職したのは22歳の時でした。戦後の高度経済成長期真っただ中で出版界が活気に満ち溢れる中、ファッション担当として活躍。それ以来、88歳の現在に至るまで、現役で仕事を続けています。
独立後、40代からは日本の伝統工芸品や生活道具の世界に深く関わるようになり、62歳で普段使いの漆器を扱う「スペースたかもり」をオープンしました。髙森さんは、「使い手の立場で器をおすすめするという仕事は、私自身の器との関わり方や暮らしぶりをお伝えすることでもあります。そう意識すると、私の『暮らしのポイント』は若い頃から意外なほど変わっていないことに気づかされます」と語ります。この言葉は、人生を通じて変わらない価値観を持ち続けることの重要性を示唆しています。
豊かな老後を築くヒント
88歳を迎えてもなお、生き生きと活動を続ける髙森寛子さんの姿は、多くの人々に勇気を与えます。82歳での台所リフォームに象徴される、年齢にとらわれない行動力と、長年培ってきた仕事への情熱、そして漆器ギャラリー「スペースたかもり」を通じた人との繋がりが、髙森さんの豊かな老後を形作っています。住まいへの満足度や、人生の「暮らしのポイント」を見出し続けることが、年齢を重ねても輝きを失わない秘訣と言えるでしょう。
参考資料
- Yahoo!ニュース: 「82歳で台所をリフォーム」し、素敵に暮らす88歳。「60代、70代でリフォームしなくてよかった」と考える、“共感しかない理由”