「外国人嫌い」増加の日本の現実:騒音と不法就労が招く高齢者の苦悩

7月の参院選では、「外国人問題」が主要な争点の一つとして浮上しました。欧米諸国では長らく国論を二分するテーマであったものの、これまでの日本では選挙でここまで大きく取り上げられることは稀でした。結果として、外国人労働者や移民の受け入れ制限を主張する政党が大幅に議席を伸ばし、この問題への国民の関心の高さが示されました。この選挙結果は、筆者が先日取材した70代の男性、Aさんの言葉を強く想起させます。Aさんの体験は、日本社会に根深く存在する「外国人嫌い」の感情がどのように生まれるのか、その一端を明らかにしています。

大阪の公営団地で暮らす高齢者Aさんの実情

無職のAさんは、大阪府内の築50年を超える5階建ての公営団地で一人暮らしをしています。エレベーターのない団地で、40平方メートルの3Kという間取りは、月2万円台という手頃な家賃で提供されています。Aさんの証言によれば、この団地の住民は「生活保護を受けている日本人高齢者」か、もしくは「外国人」が大半を占めているといいます。社会的に脆弱な立場にある人々が多く暮らすこの環境は、時に予期せぬ摩擦を生み出す土壌となります。

深夜の騒音と止まない苦情:多文化共生が抱える課題

数ヶ月前、Aさんの部屋の上の階に、南アジア出身の若い夫婦が入居してきました。夫は留学生のようで、アルバイトのために帰宅が深夜に及ぶことが多かったそうです。帰宅後、午前0時を過ぎてから料理や掃除を始める生活音が、薄い天井を通してAさんの部屋に響き渡りました。部屋を歩く振動すら伝わるほど劣悪な防音環境の中で、Aさんは騒音による不眠症に悩まされるようになりました。

Aさんは再三にわたり夫婦の部屋を訪れ、午後10時以降は静かにするよう求めました。しかし、一時的には改善されるものの、しばらくすると再び騒音が再開する状態が続きます。警察官を呼んで注意してもらっても効果はなく、状況は一向に好転しませんでした。Aさん自身が引っ越しを検討することもできますが、自らが被害者であるという思いから、その選択肢を拒否していました。

日本で暮らす外国人労働者や住民。近隣住民との関係悪化や騒音問題が「外国人嫌い」の感情を助長する一因となっている状況を示す。日本で暮らす外国人労働者や住民。近隣住民との関係悪化や騒音問題が「外国人嫌い」の感情を助長する一因となっている状況を示す。

不法就労疑惑と入管の対応:どこにも届かないSOS

上の階の夫婦の妻は、夫の「配偶者」としての在留資格で日本に滞在しているようでした。専門学校や大学に在籍する留学生は、母国から配偶者を呼び寄せることが可能です。留学生本人、そしてその配偶者は、ともに「週28時間以内」という制限の中でアルバイトが認められており、この制度を利用して夫婦で「出稼ぎ」目的で来日する外国人も少なくありません。

Aさんは、この妻がコンビニエンスストアと飲食店を掛け持ちし、週28時間という法定の労働時間を大幅に超える不法就労をしていることを突き止めました。すぐに、入管当局に通報し、不法就労として摘発するよう訴えましたが、入管が動く気配はありません。さらに、ある政党の支部を訪れて相談しましたが、「うちは外国人を助ける側だから」と、取り合ってもらえなかったといいます。Aさんの助けを求める声は、どこにも届きませんでした。

「外国人嫌い」に変わったAさんの心境:背景にあるのは何か

2時間にわたって一連の経緯を語った後、Aさんは少しばかり恥ずかしそうに筆者にこう述べました。「私ね、もともと外国人が嫌いというわけじゃないんです。昔、仕事をしていた頃は外国人とも仲良くやっていた。でも、今は外国人嫌いになりました」。

「外国人嫌い」という感情は、しばしば偏狭な「排外主義」と結びつけられがちです。だからこそAさんは自らを恥じていましたが、筆者には、つつましい生活を壊され、誰にも助けてもらえないAさんを責めることはできませんでした。迷惑な隣人は日本人の中にももちろん存在します。しかし、相手が日本語でのコミュニケーションが困難な外国人の場合、問題解決の糸口が見えにくく、不満や憎しみが募りやすくなる傾向があります。Aさんのような「外国人嫌い」の感情が全国的に増加しているとすれば、それは外国人にとっても日本人にとっても不幸な事態です。一体何が、このような状況を引き起こしているのでしょうか。

「外国人嫌い」の感情は、多くの場合、抽象的な排外主義から生まれるのではなく、Aさんの事例のように、具体的な生活上の問題やトラブルが積み重なり、それが解決されないことから生じます。コミュニケーションの壁、文化や生活習慣の違い、そして制度の不備や行政の対応不足が、問題の深刻化に拍車をかけていると言えるでしょう。

まとめ

Aさんの事例は、日本社会が現在直面している「外国人問題」の複雑な一面を浮き彫りにしています。参院選で外国人政策が大きな争点となった背景には、単なる排外主義ではない、市民が直面する具体的な困難と、それに対する不満が潜んでいることが示唆されます。政府や自治体は、外国人材の受け入れを推進する一方で、日本に暮らす人々の生活環境や、生じうる摩擦へのきめ細やかな対策が不可欠です。文化間の理解促進、多言語対応の強化、そして問題が発生した際の迅速かつ適切な行政対応が、外国人にとっても日本人にとってもより良い共生社会を築くための鍵となるでしょう。

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