米沿岸警備隊の巡視船「ハミルトン」は25日、米フロリダ州の港に同隊史上最大規模となる約34トンもの違法薬物を陸揚げしました。当局によれば、この押収量は致死量のコカイン約2300万回分に相当し、市場に出回っていれば末端価格は計4億7300万ドル(約700億円)相当に上るとされています。この大規模な押収は、国境を越えた麻薬密売が米国にもたらす深刻な脅威を改めて浮き彫りにしています。
過去最大規模の薬物押収、その詳細
今回陸揚げされた違法薬物の内訳は、コカイン約6万1740ポンド(約28トン)とマリフアナ約1万4400ポンド(約6.5トン)です。フロリダ州の全人口を致死的に過剰摂取させるのに十分な量であると、アダム・チャミー少将は声明で述べ、米国が直面する麻薬密売の脅威の大きさを強調しました。これは米沿岸警備隊の歴史において、単一の作戦による押収量としては最大規模となります。
米沿岸警備隊巡視船「ハミルトン」の甲板に積まれた、押収された大量の違法コカインとマリフアナの包み
広範囲にわたる取り締まり作戦
今回の大規模な薬物押収は、6月26日から8月18日にかけて東太平洋とカリブ海で行われた19件の取り締まりの成果です。この広範囲にわたる作戦には、米沿岸警備隊の巡視船3隻のほか、米海軍の艦艇2隻、オランダ海軍の艦艇1隻が参加しました。さらに、沿岸警備隊のヘリ部隊や米税関・国境警備局(CBP)、合同タスクフォースの部隊も協力し、国際的な連携体制の下で麻薬密輸組織に対処しました。巡視船ハミルトンの指揮官ジョン・マクホワイト大佐は、麻薬密売人が米国市場に薬物を運ぶために使用する高速艇11隻を追跡・拿捕し、コカイン約4万7000ポンドを押収したと説明しています。この作戦では、麻薬密輸の容疑者34人も拘束され、ハミルトンに搭載された無人機(ドローン)部隊が密輸船の発見に大きく貢献しました。
フェンタニル対策とトランプ政権の課題
今年に入ってから、米国に向かう総額22億ドル相当の薬物が押収されています。沿岸警備隊は、これらの薬物がカルテルや国際犯罪組織による違法フェンタニルの製造、密売の原動力となり、米国を脅かしていると警告しています。合成麻薬フェンタニル対策は、トランプ政権が最優先課題の一つとして掲げている重要政策です。トランプ大統領は、カナダやメキシコ、中国に対する関税引き上げの理由の一つとして、フェンタニルの流入阻止を挙げるなど、国家安全保障と公衆衛生に関わる問題として積極的に対応を進めています。
この記録的な薬物押収は、米国が直面する国際麻薬密売との戦いの規模と複雑さを浮き彫りにしています。今後も米国は国際社会との連携を強化し、こうした脅威への対策を継続していくものと見られます。