中国資本による「静かなる侵略」 日本の土地買収が突きつける国家安全保障上の脅威

近年、日本の貴重な土地や住宅が外国資本、特に中国資本によって買い取られ、地域住民との間でトラブルに発展するケースが頻繁に報じられています。元警視庁公安捜査官であり、現在はセキュリティコンサルタントとして活躍する松丸俊彦氏は、この現状に対し「銃やミサイルを使わない、中国資本による“静かなる侵略”はすでに始まっている」と警鐘を鳴らします。これは単なる経済活動に留まらず、日本の国家基盤そのものを揺るがしかねない深刻な問題であり、その本質を理解し対策を講じることが急務となっています。

銃を使わない「静かなる侵略」:その定義と日本の現状

「静かなる侵略」(サイレント・インベージョン)という言葉は、2018年にオーストラリアで刊行された書籍に由来します。同書では、オーストラリアの政界や市民社会における中国共産党の影響力拡大、特に港湾などの重要施設周辺での経済的影響力拡大を「侵略」の一種と捉え、著者がその危険性を訴えました。松丸氏は、日本における外国資本、特に中国資本による土地・不動産買収も、この「静かなる侵略」の一環であると指摘します。長年、警視庁公安部外事課の捜査官として情報工作や防諜に携わってきた経験から、彼はこの問題が単なる経済活動ではなく、日本の安全保障、地域社会、さらには日本文化そのものに対する長期的な脅威となりうると強く危機感を抱いています。

日本の豊かな自然が広がる土地、外国資本による買収問題の背景日本の豊かな自然が広がる土地、外国資本による買収問題の背景

「観光開発」の裏に潜む戦略的意図:具体的な買収事例

松丸氏がこの問題に強い関心を抱くきっかけとなったのは、北海道・ニセコ周辺における土地売買に関する相談でした。地元では考えられないほどの高値で、水源地や自衛隊の演習場付近の広大な土地が次々と買収されていたのです。

北海道・ニセコ:水源地と自衛隊演習場周辺の不自然な買収

表向きは「観光開発」や「リゾート建設」目的での取得とされていましたが、実際には長期間放置されたままの状態が目立ちました。売買に関わった法人の多くは、香港やマカオなどを拠点とするフロント企業であり、その背後には中国本土の資本が存在していることが多々確認されています。水源地の確保や国防上の重要地域へのアクセスは、国家戦略上極めて重要であり、このような買収の真の目的が何なのか、疑念を抱かざるを得ません。

長野・白馬村:通信インフラへの干渉懸念と監視設備

同様に、長野県白馬村では、スキー場周辺の森林が中国資本によって買収され、通信インフラへの干渉が懸念される場所に監視機器と見られる設備が設置されたという情報が寄せられています。高台は通信や監視に適しており、その目的が単なるレジャー開発とは考えにくい状況です。

沖縄・宮古島:自衛隊新設駐屯地近くの不透明な動き

沖縄県の宮古島でも、自衛隊の新設駐屯地の近くで不自然な土地買収が確認され、その後に企業の登記が突如変更されるなど、不透明な動きが続いています。国防の要となる自衛隊施設の周辺での土地買収は、安全保障上の重大な懸念材料となります。

共通する戦略的価値:水源、防衛施設、高台

これらの買収された土地には共通点があります。それは「水源地」「自衛隊施設周辺」「通信・監視に適した高台」といった、いずれも戦略的価値を持つ場所であるという点です。松丸氏は、これが偶然であるとは到底考えられないと断言しています。

中国の法律と「千人計画」:国家情報活動への利用リスク

国家情報法・国家安全法:情報提供義務と土地の拠点化

中国には「国家情報法」や「国家安全法」といった法律が存在します。これらの法律により、国内外の中国企業や個人は、国家の要請があれば情報提供に協力する義務を負います。この事実を鑑みると、中国企業が日本国内で保有する土地や施設が、有事の際に国家の情報収集拠点として利用される可能性は否定できません。日本の領土内で、外国政府の情報活動の基盤が構築されかねない状況は、国家主権の侵害にも繋がりかねない危険をはらんでいます。

「千人計画」とスパイ活動:人材・技術・情報の流出

実際、中国が展開する「千人計画」(タレント・プラン)では、外国在住の中国人や帰化者を対象に、自国への技術・情報提供を促す動きが報告されています。松丸氏自身、公安での在任中に、ある日突然、中国政府関係者が日本在住の中国人に接触し、親族の年金支給などを引き換えにスパイ活動を持ちかける事例を何度も目撃してきたといいます。これは、単なる土地買収に留まらず、人的ネットワークを通じた情報収集、ひいては機密情報流出のリスクも高めるものです。

過疎地域での「中国人コミュニティ」形成の潜在的脅威

選挙における影響力増大と文化・社会構造の変化

さらに、日本に移民して帰化する者が増えていけば、将来的に選挙で多数を占め、中国系日本人の発言力が非常に強くなる事態も想定されます。これは、日本の政治や社会構造に大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば、北海道を例にとると、全道で3500以上の過疎集落があり、その半数以上は山間部や中間部ではなく、都市的地域や平地に存在しています。過疎集落の平均人口は約150人強であるため、そういった場所で土地を買い占め、「中国人コミュニティ」を形成することは、比較的容易に行われ得ます。このような状況は、地域社会のあり方を根本から変え、日本固有の文化や伝統が希薄化する原因にもなりかねません。

結論:日本の国家基盤を守るための喫緊の課題

現在進行中の中国資本による「静かなる侵略」は、銃やミサイルを使わない非公然活動であるため、現行の日本の法律では処罰が難しいのが現状です。このため、水面下でじわじわと進行し、日本の国家基盤を内側から蝕む可能性を秘めています。この問題は、経済活動の自由という側面だけでなく、国家の安全保障、主権、そして将来の社会構造にまで関わる複合的な脅威として、より一層の国民的認識と政府による具体的な対策が喫緊に求められています。日本の豊かな自然と安全な社会を守るために、私たちはこの「静かなる侵略」に対する意識を高め、適切な法整備と監視体制の強化を図る必要があるでしょう。

Source link