松尾貴史ら著名人が加藤登紀子氏の「出生地差別」SNS投稿を批判:満州国ハルビンの歴史的背景に言及

俳優の松尾貴史氏(65)らが、シンガー・ソングライター加藤登紀子氏(81)の出生地を巡るSNS上の一部投稿に対し、差別的であり事実誤認に基づいていると批判的な見解を表明した。この論争は、理学博士によるSNS投稿が発端となり、著名人を含む多くのユーザーが歴史的背景の正確な理解と、出生地による差別の不不当性を訴える事態に発展している。

「チャイナ生まれ」論争の発端とコミュニティノートの指摘

一連の議論の発端となったのは、理学博士の高田純氏が8月25日にX(旧ツイッター)に投稿した内容だった。高田氏は、加藤登紀子氏が自身の出生地である中国黒竜江省ハルビンで「里帰りコンサート」を行ったとの記事を引用し、「加藤登紀子さんって チャイナ生まれだったんですね 反日行動 いろいろ不可解でしたが納得しました ただし国籍は日本 こころはチャイナ」と記述した。

この投稿に対して、Xのコミュニティノート機能が発動。「『チャイナ生まれ』は事実誤認:加藤登紀子氏が生誕した1943年当時のハルビンは日本の傀儡国だった満州国内です」との補足説明が付された。これにより、高田氏の投稿が歴史的事実に基づかない誤情報である可能性が指摘され、SNS上ではこの「加藤登紀子 出生地」に関する投稿を巡る批判が少なからず上がった。

著名人たちが示す歴史認識と差別への批判

高田氏の投稿に対し、エッセイストの藤井セイラ氏、映画評論家の町山智浩氏、そして俳優の松尾貴史氏といった著名人たちが次々と反論し、出生地を理由にした差別行為や誤った歴史認識に警鐘を鳴らした。

藤井セイラ氏は、加藤氏を「チャイナ生まれ」と差別しようとする投稿に対し、小澤征爾氏、赤塚不二夫氏、梅宮辰夫氏、なかにし礼氏、佐伯チズ氏、浅丘ルリ子氏、草野仁氏、坂東英二氏といった多くの著名人も満州国生まれであることを具体例として挙げた。その上で、「満州国なのか中国なのかにかかわらず、どこで生まれたか、どこの国籍かなどで差別するのはいけないこと」だと強調し、出生地による差別の不当性を指摘した。さらに、「パリ生まれやニューヨーク生まれの女性に対しても同じことを言うのか」と問いかけ、論理的な矛盾を指摘した。

映画評論家の町山智浩氏も、高田氏のポストを引用し「これにレスして『加藤登紀子は中国人』と言ってる連中がハルビンが日本の植民地・満州だったことも知らない、本当に本当にひどい人たちなので、何とかしてください。あまりにひどすぎる。日本はもうどうかしてる」と強い憤りを表明した。町山氏は、加藤氏が生まれた1943年当時のハルビンは日本の傀儡国家だった満州の都市であり、政治的には日本と密接な関係にあったことを解説。当時満州には日本人が150万人も住んでおり、加藤氏の父親が関東軍特務機関や南満洲鉄道に勤務する日本の政府職員であったこと、そして加藤氏自身が終戦時に2歳で日本に引き揚げたという事実を詳細に説明し、歴史認識の欠如を指摘した。

松尾貴史氏がSNS上の加藤登紀子氏の出生地に関する誤情報と差別的投稿を批判松尾貴史氏がSNS上の加藤登紀子氏の出生地に関する誤情報と差別的投稿を批判

松尾貴史氏は、藤井セイラ氏の投稿を引用する形で、「上方落語中興の祖、桂米朝師匠も大連のお生まれですなあ」と新たな例を挙げた。その上で、本人が選択できなかった出生地といった事柄を差別の材料にしようとする投稿を「下衆の投稿など読むに値しませんが」と厳しく批判し、SNS上での不適切な言動に警鐘を鳴らした。

一連の著名人による批判は、SNS上での誤情報や差別的な言動に対し、歴史的背景を正確に理解し、個人を尊重することの重要性を改めて浮き彫りにした形だ。

出典

松尾貴史、加藤登紀子の出生地をめぐるSNS一部投稿に言及「下衆の投稿など読むに値しませんが」 – Yahoo!ニュース