JICA「ホームタウン」騒動:移民受け入れデマを政府が否定、各地で混乱拡大

国際協力機構(JICA)がアフリカ諸国との国際交流を促進するため、国内4都市を「ホームタウン」に認定する取り組みを開始したことを受け、情報が錯綜し、関連する各市には住民からの苦情が殺到している。この騒動は、日本政府が移民受け入れを促進しているとの誤った情報が広まったことに端を発しており、国民の間に大きな混乱を招いている。

横浜の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で集合写真に臨む石破茂首相とアフリカ諸国指導者。JICAの対アフリカ国際協力の文脈を示す一枚。横浜の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で集合写真に臨む石破茂首相とアフリカ諸国指導者。JICAの対アフリカ国際協力の文脈を示す一枚。

「特別なビザ制度」巡る誤情報とSNS拡散

JICAのこの新しい国際交流プログラムは、千葉県木更津市をナイジェリアの「ホームタウン」と定めるなど、日本とアフリカ諸国間の関係強化を目指すものだ。しかし、ナイジェリア政府が「特別なビザ制度を創設する」と発表したことで、一部の報道やオンライン投稿は、この制度が日本へのアフリカ人移民の定住を目的としていると誤解釈して拡散した。特に、X(旧ツイッター)では「木更津市がアフリカ人に市を明け渡すことを真剣に検討している」とする投稿が460万回以上閲覧されるなど、デマが瞬く間に広がり、社会的な不安を煽った。

官房長官による政府見解の明確化

こうした誤情報と住民の混乱に対し、林芳正官房長官は26日の記者会見で明確な政府見解を示した。林官房長官は、「移民の受け入れ促進や、相手国に対する特別な査証の発給は想定していない」と述べ、JICAの取り組みが移民政策とは無関係であることを強調した。この発言は、誤解を解消し、事態の沈静化を図るための重要な公式発表となった。

各都市での住民の混乱と苦情殺到

今回「ホームタウン」に認定されたのは、木更津市(ナイジェリア)、愛媛県今治市(モザンビーク)、新潟県三条市(ガーナ)、山形県長井市(タンザニア)の4都市である。これらの都市は、それぞれ数千件に上る住民からの苦情や問い合わせに直面している。木更津市の担当者によると、市民からの電話は「鳴りやまない」状況で、「住民は(日本政府とナイジェリア政府)どちらが真実を語っているのか分からず混乱している」という切実な声が寄せられている。これは、国際協力の意図が、不正確な情報によって国内でどのように誤解され、不安を引き起こすかを示す事例と言えるだろう。

まとめ

JICAの「ホームタウン」プログラムは、国際交流と協力の促進を目的としているものの、不正確な情報拡散により、特に移民受け入れに関する誤解が生じ、各地で住民の不安と混乱を招いた。日本政府による明確な否定表明は、デマの沈静化に不可欠であり、今後も国際協力に関する正確な情報発信と、国民への丁寧な説明が求められる。

参考文献